戦後最低の投票率 統一地方選でわかったこと 内山融・東京大学大学院教授
先月、統一地方選が行われた。前半戦の12日には道県知事選、政令指定市長選、道府県議選があり、後半戦の26日には市区町村長選と市区町村議選があった。この統一地方選で何が起こったのか、どのような点が注目されるのか、振り返ってみたい。 まず指摘できるのは、国政与党の自民党と公明党が好調だったことである。知事選では与党系の現職がすべて当選した。自民党は、道府県議選で24年ぶりに総定数の過半数を獲得し、市議選でも2011年の前回統一選から議席を増やした。一方、民主党は道府県議選でも市議選でも前回から議席を減らしている。 このように今回の統一選は、自民・公明の強さと民主の弱さといった構図で特徴づけられる。民主党の地方での基盤の弱さが明らかになった形といえよう。またこの点は、来年夏に予定される参議院選の動向にも関連してくる。地方議員は国会議員選挙の際に「実働部隊」として大きな戦力になるため、地方議会での勢力の強さはそのまま国政選挙の結果へとはね返ってくるのである。したがって、今回統一選の結果は自民党にとって来夏の参院選に向けた有利な材料になる。民主党は地方組織の充実に力を入れる必要があるだろう。なお、維新の党や共産党も道府県議選や市議選で勢力を増やした。自民・民主の二大政党には満足できない有権者を引きつけたと考えられる。
次に注目されるのは、投票率の低さである。投票率はそれぞれ、知事選で47.14%、道府県議選で45.05%、市長選で50.53%などとなっており、いずれも戦後最低であった。この低さの大きな理由は、選挙での競争が少なかったことや、有権者が変化を期待できなかったことであろう。候補者間で活発な競争が行われていたり、1票を投じることで変化が起こるとの有権者の期待が高かったりすれば、選挙への関心も高まり、投票率も上がるであろう。しかし今回の統一選では、知事選では現職への相乗りが多く見られたし、道府県議選や市長選では無投票のところも多かった。10道県での知事選で自民・民主の対決があったのは2道県だけであった。41の道府県議選では総定数の5分の1が無投票当選であり、89の市長選でも3割が無投票だった。 そもそも地方自治には、民主主義の原理を身近な場で実践するという意義がある。有権者の政治参加意識が低ければ、地方自治は空洞化してしまう。有権者の関心を高めるためには、政党・政治家側が魅力的な争点を掲げ、活発に競争する必要がある。そのほかにも、一般の人々が議会に参加しやすくなるように日曜や夜間に開会するなど、政治参加意識を高める工夫が考えられよう。