「なんじゃこりゃ~」なデザインで当時は酷評! だがいま見ると「イケてね?」なフォード 012Cのオモシロコンセプト
1999年のコンセプトカーが可愛い!
今から25年前、1999年の東京モーターショーで公開され、ベストコンセプトカー賞を受賞したフォードの012Cというコンセプトカーを覚えているだろうか。 【画像】フォード012Cの外観などの画像を見る 今ではマニアの間で話題に挙がるというそのコンセプトカーは、1987年に東京に移住して家具メーカーの「IDDE」に従事し、その後カンタス航空のクリエイティブデザイナーに任命され、アップルにも在籍したことのある著名なオーストラリア出身のプロタクトデザイナー、マーク・ニューソン氏がデザインし、イタリア・トリノにある、フォードとも強いかかわりがあるあのカロッツェリア・ギア(マセラティ・ギブリ/1966~やいすゞ117クーペ1966~もここのデザイン。1965年からG・ジウジアーロ氏も在籍)が手掛けた、若者層をターゲットとした、スタイリングスタディのための1台であった。しかし、全世界でそのデザインを酷評されたことでも知られている。 そのダサかわいいともいえるエクステリアはセダンタイプの箱型で、フロント、リヤともにほぼ全面が、当時はまだ採用例の少ないLEDライトユニットになっている変わり種だった。ただし、こういった見方もできる。例えば、ピクサー・アニメーション・スタジオが手がけるディズニー映画「カーズ」シリーズ(2006~)に登場する、クルマを生き物とした、背景もまたカルチャライズされた世界にいるようなキャラクターの持ち主でもあったのだ。※映画「カーズ」の公開より7年も前に012Cが存在した。 たしかにエクステリアデザインは酷評されたようだが、前後ドアが大きく左右に開く観音開きドアの内側、つまりホワイト、薄グレーと鮮烈なオレンジに彩られた(のちにエクステリアとインテリアのオレンジ部分はグリーンに変更)。インテリアを見ると、かなり先進的で、今、登場すれば大きな注目を浴びるに違いない仕立てであることは間違いない。
未来感あふれるデザインは今なら大ウケ間違いなし!?
運転席は福祉車両にあるような90度回転式で乗降のしやすさがあり、おそらく下部にはLEDライトが設けられ、夜の乗降も安心安全。天井内張りには光ファイバーが配され、車内の明るさを演出。 インパネはまさに1999年当時の未来のクルマそのものと言っていい。 何しろインパネはホバリングインストルメントパネルと呼ばれる上下調整が可能なアイディアが盛り込まれているのだ(シートではなくインパネの上下でドラポジを決める!?)。4速オートマチックのシフトはシンプルデザインのステアリング左右に配置(ステアリングスイッチはそれだけ)。 クロノグラフを思わせるシルバーリングのメーターはインパネ中央にあり、左にスピードメーター、右にどうみてもクロノグラフな回転計と、白い盤面の小さな各種メーターが並んでいるカッコよさがある。 そしてその下にPレンジやライト、エアコンなどの、直感的に扱える小さなスイッチ8個が整然と並び、1DINサイズのオーディオユニットが配置されているシンプルさである。今日のコンセプトカーにそれらが採用されれば、おそらく未来感あるクルマのインパネとして絶賛されるかも知れないデザインではないか。 車内はBピラーレス&広いガラスエリアと細いピラー、フラットフロア(多分)によって広々。若者が2006年6月9日に公開された映画「カーズ」の世界を先取りしたように楽しめるコンセプトカーだったようにも思える。 さらに、フォードの012Cのユニークさといっていいのが、ラップアラウンド格納式トランクだ。トランクリッドを上にもち上げるのではなく、なんと引き出しのように手前に引き出す仕掛けなのである。実用性はともかく、アイディアとしてはかなり面白いではないか。 なお、モデル名021cの知り得るスペックは、駆動方式FF、乗車定員4名、エンジンはフォードが1991年に導入した1.6リッターZetec(ゼテック)マルチバルブ、100馬力、ステアリングスイッチで操作するミッションは4ATとされている。ピレリ製タイヤのトレッドまでマーク・ニューソン氏によるカスタムメイドデザインだったらしい……。 繰り返すが、エクステリアやトランクの仕立てはともかく、インテリアだけを見れば、現時点でも未来的といえるデザイン、機能性の持ち主といえるのがフォード012Cだったのだ。
青山尚暉
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