老後ひとり暮らしで直面する「お金の問題」、成年後見人制度をどう使うか?専門家が解説
遺品整理・生前整理などの事業を展開し、『老後ひとり暮らしの壁』(アスコム)を上梓した山村秀炯さん。おひとりさまシニアのサポートも行い、多くのおひとりさまと関わるなかでやはり大きな問題だと語るのは、お金の管理だ。そこで、お金の世話をしてくれる家族やパートナーがいないとき、どういった選択肢があるのか教えてもらった。 【写真】老後のお金に関するアドバイスを写真とともに紹介!
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判断能力を失った成年にサポート役をつける「成年後見制度」
自分が認知症になったら、とはあまり考えたくないものだが、そのリスクは誰にもある。認知症の前段階でも、記憶力が低下し物忘れなどが気になるようになってくると、お金の管理にも不安が生まれるだろう。 「認知症が進むと、銀行口座の暗証番号を忘れてお金が引き出せなくこともありますし、振り込め詐欺などの標的になり、せっかく貯めた財産を失って生活に困ることもあるのです(山村さん・以下同) まっさきに考えるべきだと山村さんが言う財産の保全に関して、知っておきたいのは「成年後見制度」だ。 「『成年後見人制度』は、『判断能力』を失った成年に対して、本人に変わって法的行為を行う『後見人』と呼ばれるサポート役をつける制度です」 「成年後見人制度」には、大きく分けて「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがある。 ◆自分で後見人を選ぶことができる「任意後見制度」 まだ判断能力があるうちに、自分で自由に後見人を選んで契約ができるのが、「任意後見制度」だ。 「後見人に依頼したいことも自由に決められるので、例えば後見人は不動産の売買はできないようにしておくとか、預貯金の管理はAさん、介護保険などの申請はBさんと複数の後見人を選ぶこともできます」 任意後見人は誰でも選ぶことができるため、人となりを知っていて信頼できる親族や、お金の管理・契約の遂行の面で安心できる弁護士などの専門家、また見守りサービスを行っているNPOといった選択肢がある。 『財産管理』は専門家に、『身上監護』はNPOにと役割を分担して、「お互いによく相談して決めるように」といった契約も可能だ。 「任意後見人契約では、日常の生活をどのように送りたいかをヒアリングして、ライフプランを立てることができます。たとえば『最期まで自宅で過ごしたい』とか、『入居する施設はここがいい』とか『自分が亡くなったらペットはこうしてほしい』とか、認知症になってもQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を保てるようにあらかじめお願いしておくことができます」 ◆家庭裁判所への申し立てで後見人が選ばれる「法定後見制度」 「法定後見制度」では、後見人を選ばないまま判断能力を喪失してしまったときに、家庭裁判所への申し立てによって、公平な後見人が選ばれる。 「申し立てをするのは家族が多いですが、後見人には弁護士や司法書士など、法律の専門家が選ばれることが多くなります」 ◆後見人に依頼できるのは財産管理と身上監護 後見人の役割には、大きく財産管理と身上監護の2つがある。 財産管理は預貯金の管理や家賃・公共料金の支払い、納税、年金の受け取り、遺産の分割や資産の管理、通帳などの保管といったお金にまつわる管理を担当する。 身上監護は病院での手続きや支払い、医療・福祉・介護サービスなどの手続き、住居の手続きや契約・支払いなど生活のなかで必要になる手続きなどに加え、生活状況の定期的な確認も行う。