史上最多6人指名の富士大 後輩が一気に増えたオリックスの崖っぷち右腕が豪州から復活へ
オリックスから1位指名された麦谷祐介外野手(22)の取材で、先月28日に岩手県花巻市の富士大に足を運んだ。今ドラフトでは同一チームから史上最多6人が指名され話題の同大学。キャンパス近くにリンゴ畑が広がるのどかな場所にあった。 「本当に遊びに行くところがなくて(笑い)。飲みに行くのも花巻市の商店街ぐらいしかない。野球ばっかりしていましたね」 懐かしそうに振り返っていたのは、今季は育成契約だった小野泰己投手(30)だ。後輩となる麦谷とは面識がなく「僕のことなんて知らないでしょ」と謙遜したが、来季はもう一度、新人のような気持ちで居場所を奪いにいく年となる。 16年ドラフト2位で富士大から阪神入団。しなやかなフォームから軽々と150キロ超をマークする直球を、当時の金本監督から絶賛された。2年目の18年に7勝。ただ、年々、制球が定まらなくなった。22年は中継ぎ5試合に終わり、オフに戦力外通告。育成選手としてオリックスに拾われ、翌23年には一度支配下登録されながら、オフに再び育成選手となる過酷なキャリアを歩んできた。 それでも、その潜在能力への評価は依然として高い。今季途中にサイド気味に下げていた右肘を「一番投げやすい高さ」に戻し、2軍戦の終盤戦は圧巻の投球の連続。岸田新監督の“初采配”だった10月20日のみやざきフェニックス・リーグ、DeNA戦では、他の投手陣が140キロ前後の中で158キロをマークした。別格の存在感を見せ、指揮官を「本当に凄かった」とうならせた。 「すぐシーズンが始まってほしいぐらいですけど、この感覚を忘れないようにしたい」 10日から豪州に渡り、30歳にしてウインター・リーグに参戦。若い高島、斎藤とともに「メルボルン・エイシズ」の一員としてマウンドに上がる。今の小野なら“無双状態”だろう。泰己という名前通りの「大器晩成」となってほしい。 (記者コラム・山添 晴治)