最終出勤日に上司から恨み節…退職者が“名誉毀損”を訴えた結果「慰謝料20万円」が認められたワケ
裁判所の判断
Xさんの勝訴だ。上司の恨み節について裁判所は「業務上の必要に基づくXさんへの叱責や他の従業員への説明という範疇を超えて、Xさんの名誉感情を著しく害する行為であり、Xさんに対する不法行為である」として、「慰謝料20万円払え」と会社に命じた。 Xさんは「他に5つほどのパワハラがあった」と主張したが、認められなかった。一部を抜粋する。 ■ 引き止め Xさんは「上司が転職先を追及してきて、退職届の撤回や退職時期の変更を求めてきた」と主張したが、これを裁判所は「セーフ」と判断。具体的には「転職先を確認したり、従業員を引き止めることが直ちに従業員の退職の自由を侵害する行為ということはできない」と述べた。
他の裁判例
社員に対する嫌がらせとしては、【仲間はずれ事件】の判例もある。(関連記事:「なぜ私がやらないといけないか」仕事をえり好みした“問題社員”が解雇… 会社を訴え、裁判所に「慰謝料」認められた理由/東京地裁 R5.10.25) この事件で会社がとった処遇は▼朝の定例会に出席させない▼共有サーバーへのアクセスを遮断▼勉強会に出席させないというもの。裁判所は「人間関係の切り離しで不法行為にあたる」と、会社に対して慰謝料30万円の支払いを命じた。
最後に
退職しようとする従業員に対して翻意を促したり、きちんと引き継ぎを行うよう要請することは問題ないが、怒りに任せて恨み節を述べると不法行為と認定されることがある。 辞める人は上司からグチグチ文句を言われがちなので、録音していたら慰謝料請求できる可能性がある。参考になれば幸いだ。 ■ 林 孝匡(はやし たかまさ) 【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。情報発信が専門の弁護士です。 専門分野は労働関係。好きな言葉は替え玉無料。
林 孝匡