脱炭素社会へ断熱の効果語る 専門家の内山さんが講演 館山(千葉県)
「脱炭素」「断熱」の観点から、住み続けたい地域づくりを学ぶセミナー「脱炭素化と断熱入門」が18日、館山市の館山商工会議所で開かれた。一級建築士で省エネ建築診断士の内山章さんを講師に、脱炭素の目的や住宅などの断熱に取り組むことがもたらす地域への効果などについて、参加者約50人が理解を深めた。 館山商工会議所青年部と、官民の有志らと内山さんでつくる「館山脱炭素デザイン会議」が共催。館山市は、2050年をめどに二酸化炭素など温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言しており、同会議では具体的な取り組みにつなげようと、勉強会などを通して活動している。住民や事業者の理解の一歩となるよう、“入門編”としてセミナーを開いた。 内山さんは、日本の住宅は断熱化が進んでおらず、屋内にいながら寒暖差による健康被害が多いことを説明。冬の寒さが厳しいとされる北日本よりも、温暖といわれる九州や四国の西日本ほど、ヒートショックでの死亡数が多い傾向であることを示し、その原因は断熱化の差にあると指摘した。 断熱することは健康に好影響をもたらす他、エアコンなどの空調設備に頼らなくなるため、電気の使用量が抑えられ脱炭素につながる。さらに、来年4月には住宅の断熱性能を表す等級の見直しも行われ、これまで最高であった等級4が最低基準として義務付けられるなど、50年までの脱炭素化に向けて断熱を見直す動きが高まっていくと説明した。 断熱化は初期投資が高くなるが、長い目で見ると、必ず壊れる空調設備の買い替え費、医療費などを抑えることができ、非常に経済的だと強調。地域として住宅はもとより、子どもたちが学習する学校施設、災害時に避難所となる施設などの性能向上に力を入れることは、「暮らし、仕事、教育」の充実につながり、住む人たちの幸福度を上げる。地元を離れた人も住みたいと思えるまちづくりにつながると訴えた。 同じ不動産会社に勤める館山市内の40代女性2人は、「これまで脱炭素とは何か、漠然とした理解だったがよく分かった。断熱化の補助金は国レベルで動いてほしい」「官民連携して移住だけを進めるのでなく、安心して住める家を勧められれば移住につながるのではと思った」と感想を話した。 (安井咲子)