アンティーク着物からヒジャブを作る日本人女性の挑戦 ── 相互理解のために非イスラムの私ができること
「理解が進んでいる」と実感
紗紗として事業を始め、今年で7年目。3月には「豊洲千客万来」、5月には東京・浅草のハラルショップにも販路を拡大。ネット通販の受注分も含め、今や月に100枚近くの着物ヒジャブを製作する。人手が足りず、一部の工程を委託するようになったが、着物やシフォン生地の買い付け、デザインなど、受注から発送までのほとんどを小林さんが担う。 店舗の顧客はほぼ、海外からの訪日観光客だ。当初は東南アジア方面が多かったが、現在は米国、中東、ヨーロッパからの観光客にも需要があるという。
「7年前に比べ、日本でもハラル食材店やヒジャブ姿の女性を見かけることが増えました。イスラム文化への理解も、以前よりは進んでいます。私の活動について友達に説明すると、昔は奇異な目で見られたのが、今は『すごいね!』という反応が返ってくる。いつか自分の職場や町内で、イスラム教徒と近しくなる日が来るかもしれません。もっとお互いを知ることが必要です」
「真の美に国境はない」
今後は“日本発のヒジャブブランド”として発信したい、と熱を込めて語る小林さん。全身を覆うロングコート風のイスラム民族衣装であるアバーヤも、「ヒジャブとセットでコーディネートしたい、作ってほしい」という要望が多い。「着物の美しさを知ったお客さんの期待に応えたい」と、開発に意欲的だ。 「美しい物どうしを組み合わせた着物ヒジャブは、お互いの文化をポジティブに理解するための入り口にできると思う」 紗紗のウェブサイトに掲げられたモットーは、“True Beauty Knows No Borders.” 日本とイスラム文化の懸け橋という生き方を見つけた小林さんの夢は、これからも広がっていく。 撮影=花井智子 取材・文=ニッポンドットコム編集部