食品ロスを減らすため――平日夕方池袋に並ぶ旬の野菜たち
東京・池袋駅で夕方になると並ぶ、新鮮で格安な「野菜」。平日の夕方6時過ぎ、東京・池袋駅の東武東上線・南改札口の脇に行列が。 それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
『TABETEレスキュー直売所』 そう書かれたのぼりのもとに並んでいる皆さんのお目当ては、ナスやきゅうり、旬の栗など、ズラッと陳列された新鮮な野菜や果物。夕方6時半前、スタッフの方の「お待たせいたしました!」の声が聞こえて販売が始まると、列に並んだ皆さんが、野菜や果物を手に取って、緑色の買い物かごに入れていきます。 この野菜や果物は、埼玉県東松山市・滑川町・嵐山町・小川町・鳩山町の5つの市と町で生産されて、近くにある5つの直売所に、夕方4時過ぎまで並んでいた物です。残念ながら直売所では売れ残ってしまった商品を集めて、池袋駅で販売しているのです。 ただ、夕方4時に埼玉のお店にあった野菜が、夕方6時に池袋に並んでいる……。普通に考えれば、「えっ、間に合うの?」と思うかもしれません。実は、この野菜を運んでいるのは車ではなく、東武東上線の「列車」なんです。
埼玉の5つの直売所で売れ残った野菜は、まず、滑川町にある森林公園駅に運ばれて、上りの「川越特急」池袋行に、およそ4分の停車時間を使って積み込まれます。午後5時ちょうどに森林公園を発車した列車は、途中、東松山、坂戸、川越市、川越、朝霞台の5駅に停まり、終着・池袋には、午後5時49分に到着します。田園風景が広がるのどかな埼玉の郊外から、家やビルがひしめき合う東京23区まで、およそ50分の「旅」をしてきた野菜というわけなんです。 いったい、これらの野菜や果物は、どのようにして、東京・池袋の人たちに届いているのか。 「TABETEレスキュー直売所」には、6つの団体や会社が参加しています。東松山市、JA埼玉中央、東武鉄道、大東文化大学、大塚応援カンパニー。そして、もう一つ、これらの団体や会社を結び付けている会社があるのです。 「株式会社コークッキング」という食品ロスの削減に取り組んでいるベンチャー企業です。「TABETEレスキュー直売所」の運営を行っています。 トップを務める川越一磨さんは、1991年、東京生まれの33歳。川越さんは、大学時代にまちづくりについて学びながら、和食のお店で料理人の修行をしたのち、大手飲食店に就職して店舗経営を経験します。そのなかで、多くの食品が捨てられていることに心を痛めました。 飲食店を退職した川越さんは、株式会社コークッキングを創業。2017年からは、デンマークでの取り組みをヒントに、日本で初めてのフードロスに特化したスマートフォンアプリ「TABETE」を作り、テイクアウトのお店や飲食店の食品ロスの削減に取り組みます。