食品ロスを減らすため――平日夕方池袋に並ぶ旬の野菜たち
そして2020年、コークッキングが東松山市の起業家を応援するファンドの支援を受けたことをきっかけに、市の担当者の方からこんな提案を受けました。 「東松山市では、新たに農業を始める方や若い農家の方を応援したいと考えています。野菜や果物のロスを減らすために、ぜひ一緒にやりませんか?」 東松山市の農産物直売所も他の地域同様、農家の方が野菜や果物を持ち込んでいます。しかし売れ残ってしまうと、農家の皆さんは自ら再び直売所へ出向いて、丹精込めて作り上げたものを引き取るのが通例となっていました。 しかも、この野菜や果物は、鮮度の問題で廃棄されてしまうこともありました。農家の方にとっては、引き取りに行く手間が、精神的苦痛に感じられたり、直売所へ納める商品を少なくする、「納品控え」が悩みのタネとなっていたんです。
『新たに農業を始めた人たちを含め、農家の皆さんが、野菜の回収を気にすることなく、思いっきり野菜を作ってもらって、収入を増やすことにつなげてほしい』 川越さんたちと東松山市役所の皆さんと共通の思いに、次々と賛同者が現れます。野菜を集めるJA埼玉中央、野菜を運ぶ東武鉄道、食品ロスを学ぶ大東文化大学が参加、この5つの団体と、5~6軒の農家の方の協力の下で、2021年8月、池袋駅の「TABETEレスキュー直売所」は、スタートにこぎつけました。 そのオープンから3年あまり、現在では200軒以上の農家の皆さんが参加。お店のリピーターも増えて、新鮮な野菜への満足の声が寄せられています。なかには、川越さんをはじめスタッフの皆さんにとっても、ちょっぴり報われた気持ちになれる声もありました。 「駅で野菜を買っただけですけど、食品ロスの問題に関われたことが嬉しいんです!」 農家の人の思いがたっぷり詰まった朝採れ野菜を載せた列車が、きょうも、黄昏時の関東平野を駆け抜けて、池袋にやってきます。