スバリストならこれで満足!? 「クロストレック ストロングハイブリッド」の18.9km/リッターはいいのか悪いのか
スバルの宿命
「走りはいいけど、燃費が悪い」が定評(失礼!)だったスバルに、待望のストロングハイブリッドが登場した。 【写真】S:HEVを搭載したクロストレックをもっと詳しく(17枚) そもそも、スバルの燃費が芳しくない最大の理由は、水平対向エンジンそのものといわれてきた。エンジンの低燃費化には、ピストンの直径(ボア)よりそれがシリンダー内を動く距離(ストローク)が長いロングストローク型が有利とされるが、水平対向を縦置きする構造上、ストロークを伸ばすとエンジン幅が増える。しかし、スバルのエンジンルームはすでにキツキツなので、ストロークを伸ばす余地はほとんどない。つまり、水平対向エンジンにこだわる以上、燃費がネックとなる宿命なのだ。 現行スバルの現行エンジンでもっともストロークが長いFB系でも、実際のストローク値は90.0mm。同エンジンでロングストロークを実現しているのはボアが84.0mmの2リッターだけで、2.5リッターはボア94.0mmのショートストロークとなっている。ちなみに、トヨタの主力4気筒であるM系エンジンのボア×ストロークは、2リッターで80.5×97.6mm、2.5リッターで87.5×103.4mm。スバルFB系と比較すると、超がつくほどのロングストローク型となっている。 スバルはそんな宿命を逆手に取った(?)「燃費より走りで勝負!」の姿勢で、ファン(=スバリスト)の心をつかんできたが、このご時世ではそれも限界。提携先のトヨタの技術を借りて、水平対向やシンメトリカル4WDといったスバルらしさも失わないストロングハイブリッドの「S:HEV」を完成させた。 そんな記念すべきS:HEVの1号車には、自社製エントリーSUVの「クロストレック」が選ばれた。エンジンは2.5リッターで、駆動方式は4WDのみ。燃費(WLTCモード、以下同じ)は18.9km/リッターをうたう。
なぜ2.5リッターなのか?
……といったスペックを見るに、日本のスバリストの多くが率直に抱くのは「なぜに2.5リッター?」という思いだろう。クロストレックは、いわゆるCセグメントに属するクロスオーバーSUVである。直接競合する「トヨタ・カローラ クロス」に搭載されるハイブリッドは1.8リッターで、クロストレックと同じ4WD車だと燃費は24.5km/リッター。「ホンダZR-V」のそれは2リッターで、同じく4WD車の燃費は21.5~21.7km/リッターである。せっかくのS:HEVなのに、燃費はやっぱりライバルに見劣りするからだ。 クロストレックは車体そのものをハッチバックの「インプレッサ」と共有しており、SUV専用デザインのカローラ クロスやZR-Vより全幅も全高も小さい=空気抵抗でも有利。にもかかわらず、燃費でトヨタやホンダに水をあけられてしまっている。だったら、なおのこと「ロングストローク型の2リッターだったら、20km/リッター台もイケたんでは?」と、われわれやじ馬は夢想してしまうのだ。 燃費が自慢のはずのS:HEVなのに、あえて燃費に不利な2.5リッターを選んだスバルの公式見解は「動力性能と燃費のバランスをとったから」で、開発担当者はさらに「海外ではトレーラーを引っ張ることもあって、それなりのパワーが求められます」とも付け加えている。クロストレックにはすでに2リッター簡易ハイブリッドの「e-BOXER」があり、それより複雑なS:HEVは、どうしてもe-BOXERより高価になる。となると、明確に高い商品力をもたせる必要があるということか。 実際、装備レベルが近い2リッターe-BOXERの「リミテッド(4WD)」と2.5リッターS:HEVの「プレミアム」という2台のクロストレックを比較すると、後者が40万円近く高いが、そのぶん明らかにパワフル、かつ燃費もいい。なるほど、スバルの主張もわからなくはない。 それでも、トヨタやホンダの競合車と比較すると、「2リッターだったら、もっとバランスがとれていたのでは?」との思いは消えない。そういえば、先代クロストレック(当時の日本名は「XV」)に、北米限定で用意されたプラグインハイブリッドも、同じくトヨタのシステムをベースとしながら2リッターだった。