受刑者「正直きつい」 10月からの郵便料金値上げ、塀の中から悲鳴の声 物価高も追い打ち
10月1日から郵便料金が値上がりした。今の時代はスマホ1台あれば他人とすぐに情報を交換できるが、日常の連絡を郵便に頼らざるを得ない人もいる。それが自由を制限された刑務所の受刑者たち。今回の値上げに塀の中からは悲鳴の声が上がっている。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介) 【動画】64年ぶりに刑務所を出た91歳の殺人犯
●国内の郵便物、2001年度をピークに減少
日本郵便は10月1日から、▽はがき63円→85円▽定形郵便物・25グラムまで84円、50グラムまで94円→50グラムまで110円▽レターパックライト370円→430円ーーなどと郵便料金を変更した。 値上げの理由について日本郵便は、郵便物数の減少や人件費、燃料費の上昇などを挙げ、「今後とも、郵便サービスの安定的な提供を維持していくためには、郵便料金の引上げをお願いせざるを得ない状況にあります」と説明している。 総務省の資料によると、国内の郵便物数は2001年度の262億通をピークに毎年減り続けており、2022年度は144億通だったという。 背景には、インターネットやSNSの普及、水道やガスなどの各種請求書のデジタル化などがある。
●外部との連絡を手紙に頼る受刑者
スマートフォンがインフラ化している現代において、個人間で連絡を取り合う手段として郵便を利用する人が少なくなるのは当然の流れかもしれない。 そんな中で例外的な存在が、刑務所や拘置所で服役している受刑者たちだ。 受刑態度によって電話の利用が許されることもあり、親族であれば面会することもできるが、家族が住む場所から遠く離れた刑事施設に収容されることも珍しくなく、外部との連絡を手紙に頼る囚人は多い。 そんな彼らに今回の郵便料金の値上げについて尋ねると、悲鳴にも似た声が返ってきた。
●30代の受刑者、作業報奨金は月2000円
「何もかもが物価高騰で値上がりしているこの状況で、郵便料金が値上がりしてしまうのも仕方ないのかなと私はそう受け止めるように心掛けてはいますが、定形郵便物の郵便料金が84円→110円へと一気に上がったのは正直きついですね」 九州地方の刑務所で服役する30代の男性受刑者がそう吐露するのには金銭的な事情がある。 受刑者は日々の刑務作業によって「作業報奨金」を得られるが、その額は社会とは比較にならないほど低い。 作業の内容や上げた成果などによって変わり、1時間あたり7円~56円ほどだ。法務省によると、作業報奨金の1人1カ月あたりの平均支給計算額は、2022年度は約4537円だったという。 郵便料金と比較すると、値上げ分の報奨金を得るために約4時間分の作業が必要になる受刑者もいるとみられる。 この男性受刑者は現在、「6等工」という上から6番目の基準にいるといい、1日約7時間の作業で月2000円前後の報奨金を得ている。