各国間の温度差が目立ったG7財務相・中央銀行総裁会議:日本の為替介入の是非を巡る議論は回避
中国生産過剰問題では各国の姿勢の違いが表面化
今回のG7財務相・中央銀行総裁会議では、中国の過剰生産問題も大きなテーマとなった。中国政府が巨額の補助金を与えることで、中国製電気自動車(EV)などの海外輸出を拡大させ、それが海外企業・経済に打撃を与えている問題だ。 米国は5月14日に、不公正な貿易慣行に対する制裁措置として、中国製EVへの関税率を現在の25%から100%に引き上げるなどの措置を打ち出した。 EUも公平な競争環境を維持するため中国製EVへの制裁関税を視野に入れているが、各国は一枚岩ではない。ドイツでは、貿易摩擦による雇用への悪影響を懸念して、産業界から制裁関税に反対論も出されている。また、イタリアのジョルジェッティ経済財務相は25日に、中国の過剰生産問題への対処を巡り「報復も考慮に入れると様々な見解がある」と指摘した。EUが制裁措置を講じる場合、中国がその報復に動けば、EUの企業、経済も打撃を受けてしまうこと、あるいはそれを機に保護主義が広がり、世界貿易が縮小しまうことを警戒しているのだろう。 多様な意見を受けて、最終的に25日に採択されたG7の共同声明では、この問題で中国を名指しすることは避けた。そのうえで、市場ルールにそぐわない政策や貿易慣行に「懸念を表明する」と明記している。また、公平な競争条件の確保に向け、世界貿易機関(WTO)ルールに沿って「措置を講じることを検討する」とした。 他方日本も、中国の過剰生産への懸念を共有する姿勢を見せているが、実際には強い関心を持つテーマとまでは言えないのではないか。中国製EVはほとんど国内に流通していない。その他、安い中国製品によって国内市場が席巻されているとの問題意識は強くないだろう。 インフレ問題への対応が国内の最優先課題であるなか、安価な中国製品が国内に入ってくることはむしろ物価の安定に寄与することから歓迎される面がある。「チャイナショック2.0」と警戒する欧米諸国とは温度差が大きい。 それでも、日本は米国が主導するこの問題で足並みを揃える背景には、為替の安定、為替介入策で他国からの支持を得るために必要、との計算があるのかもしれない。