■アカウントを聞くだけならいいが、断られてもしつこく聞くとアウト 　男性上司の言い分は、「気楽な気持ちで聞いたものであり、下心はなかった」というもの。インスタを始めたばかりで、純粋に「友達」を増やしたかったのだそうです。しかし、本人は気楽な気持ちでも、女性からしてみれば業務命令のように聞こえたかもしれません。 　部下にSNSのアカウントを聞くだけならば、その時点でハラスメントとは言えません。ただ、本人が嫌がっているのにしつこく聞いたり、フォローを要求したりすると、優越的な立場を利用して業務とは関係のない行為によって就業環境を害した(=パワハラ)とみられる可能性があります。またその後の「彼氏とデートだったの？」などの言動もセクハラ行為に該当するでしょう。「悪気はなかった」では済まされないのです。 　SNS時代の部下との関わり方で大切にしたいのは「マナー」。パワハラとなるかどうかを行動の基準にするのではなく、「相手を敬っているかどうか」をすべての基本にすべきと私は考えています。 　先ほどの50代男性上司の行為は、相手を慮ったものではありませんでした。SNSで部下のアカウントを見つけたとしても、フォローせず、見つけたこともにおわせない。上司こそ、仕事と個人をしっかり区別するべきでしょう。 　マナーは、SNSを利用するすべての人に必要で、匿名であっても言葉は選ぶべき。「死ね」「殺す」は絶対にNGです。日本における「X」(旧ツイッター)のユーザー数は、世界でも群を抜いて多いそうです。裏を返せば、日本人はそれだけ発信の場を求めているということ。だからといって、自分勝手なモラルや一方的な感情をぶつけることは、あるべき姿ではありません。マナーを守ってSNSを楽しんでもらいたいと思います。 　※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月4日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 山藤 祐子（ざんとう・ゆうこ） ハラスメント対策専門家 ハラスメント研修専門講師として年間150日以上登壇、年平均の受講者は1万人以上。研修を実施した企業や自治体は400社以上にのぼり、管理職研修の累計参加者数は2万人超。 ----------