<ライブレポート>サザンオールスターズと楽しみ尽くした夏の終わり――夏フェス”勇退”、異例づくしの【ロッキン】ひたちなか
サザンオールスターズが、9月23日に茨城・国営ひたち海浜公園にて開催された【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA】(以下、RIJF)に出演した。 【RIJF】25周年の大トリとなるこのステージをもって、夏フェスからの“勇退”を宣言していたサザンオールスターズ。演奏時間は約100分、またこのステージのみが全国332の映画館でライブ・ビューイング中継されるという前例のない内容で、開催前から話題をさらっていた。そんな、会場に集まった約5万人とライブ・ビューイング会場に集まった全国約15万5,000人からの大きな期待を軽々と超えていくような、圧巻としか言いようがないステージだった。 直前のTHE YELLOW MONKEYのステージが終わり、17時をまわった頃。フェス日和と言うべき晴れた涼しい天気の会場が一気に冷え込み、半袖では肌寒さを感じるほどの気温になった。時に寒さを感じつつも、今か今かとサザンの登場を待ちわびる人たちで〈GRASS STAGE〉はどんどん埋めつくされていく。そしていよいよ開演のジングルが鳴り、ステージには桑田佳祐(Vo. / Gt.)、関口和之(Ba.)、松田弘(Dr.)、原由子(Key.)、野沢秀行(Per.)の5人が登場。まずは全員で手を繋ぎ、その手を大きく掲げてから会場に深々とお辞儀をすると、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。 軽く音出しをしたあとは松田の4カウントから、メジャー・デビュー前からの楽曲「女呼んでブギ」でライブがスタート。すると会場の凄まじい熱気で、先ほどまでの寒さがどこかに消えたのだ。これが“夏”を背負ってきたバンド、サザンオールスターズのパワーなのだとさっそく圧倒されてしまった。 「今日、皆さんに会えるのを心から楽しみにしておりました!」と桑田が叫ぶと、こちらこそ!と言うような歓声が返る。「THE YELLOW MONKEYが終わったら半分くらい帰るって聞いてたんですけど……」と笑いを誘ったのち、「残ってくれてありがとう! 今日はよろしくお願いします!」と、今度は最新曲「ジャンヌ・ダルクによろしく」へ続けた。デビューから47年目を迎えても今なお骨太なロックを鳴らす姿を力強く刻みつけると、「My Foreplay Music」で一気に、こちらもサザンの真骨頂と言える妖しい夜のムードで会場を包み込む。そこから、ゆったりとしたリズムが心地よい「海」では強く吹き続ける海風がどこか心地よく感じられ、「神の島遥か国」ではサビで大きく手を挙げ振る振付で会場をまるで沖縄の空気にすると、一転して「栄光の男」で胸を熱くさせ……と、曲ごとに全く違う景色を作り上げていく。 一息つくと、シンセサイザーの妖しいメロディーが鳴り響く。そこから始まったのは「愛の言霊(ことだま)~Spiritual Massage~」。イントロ、原のピアノリフから大歓声が上がり、間奏のトランペットとギターのプログレッシブな掛け合いアレンジも光る。レイドバックした歌唱がムードを際立たせた「いとしのエリー」、間奏ではデビュー当時のライブ映像が流れ、長いバンドの歴史と、1979年リリースとは思えない今時なメロディーのギャップに驚かされる「思い過ごしも恋のうち」と進むと、ふたたびMCへ。ライブ・ビューイング用のカメラに手を振りつつ、改めて今回が最後の“夏フェス出演”になることを語る。「ええーっ」と残念がる観客に対し、「夏フェスは最後なんですけどね、まあ……秋はね……(笑)」と濁して笑いを誘うと、突然「ヤバイTシャツ屋さん好き? さっき楽屋で話しちゃった。WANIMAとも。もうあんな声出ないよ俺……(ももいろ)クローバーZも、Creepy Nutsも。最近の若い人はすごいね!」と、今日の出演者たちとの交流をニコニコ嬉しそうに語り始める桑田。その姿に観客も笑顔になると、アコースティックギターを手に取り「掛け合い、できるかな?」とコール&レスポンスを始める。そのメロディーのまま始まったのは「東京VICTORY」。最後の歌詞、〈We got the victory.〉 を〈イイねROCK IN JAPAN!!〉とアレンジしてみせると、観客のコーラスも一段階声量が上がったように感じられた。そして、遠くから聞こえる波の音が運んだ「真夏の果実」は、ステージ上の照明がぐっと暗くなって、会場の空に浮かんだ星がステージに光を添えるさまが最高にロマンチックだった。 そこから、突然ステージの照明がギラギラと光り始め、「恋のブギウギナイト」で会場はすっかりディスコの様相に。ステージいっぱいのセクシーでドレッシーなダンサーたち、噴き上がるスモーク、ぐるぐる回るレーザー……。先の「真夏の果実」からのテンションの跳ね上がり方といい、聴覚のみならず視覚からも膨大な情報量を注ぎ込まれていることといい、なんだか頭がくらくらしてくると、「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」「マチルダBABY」「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」と、ここからも絢爛かつアッパーなキラーチューンを重ねていく。 「♪夏フェスは 暑すぎて おじいさんとおばあさんは Goodbye……」と、演歌風にしっとり(?)歌い上げ爆笑を誘ったあとの「みんなのうた」では、恒例の放水パフォーマンスもしっかり披露。本編最後は「マンピーのG★SPOT」で、普段の【RIJF】全日程分を1曲で打ち上げているのでは?と思う量の花火とともに最大級の盛り上がりに。“コンプラ”とはどこへやら、やりたい放題のステージに、見渡す限りの観客みんなが笑顔になっていた。 アンコールの熱い声に応えてもう一度ステージに登場すると、「もっとやる? そう言うと思った!」とお茶目に呼びかける桑田。そして始まった「希望の轍」のイントロからの大歓声といったら! このテンションのまま、最後を締めくくったのは「勝手にシンドバッド」。会場全員が歌っているに違いない、と思わせる大合唱のなか、総勢40名ものサンバダンサーが登場し、〈砂まじりのひたちなか〉はすっかりカーニバルに。さらにアウトロでは、この日の出演者――ヤバイTシャツ屋さん、ももいろクローバーZ、緑黄色社会、Creepy Nuts、WANIMA、THE YELLOW MONKEYが、誰ひとり欠けずにステージ上へ現れ、興奮は最高潮に。桑田がひと組ずつアーティスト名をコールしたり、桑田へビッグリスペクトを寄せるR-指定(Creepy Nuts)と、その歌声を絶賛していたKENTA(WANIMA)へマイクを向け、ふたりも満面の笑みで〈ラララ〉と歌い上げたりする感動的な一幕も。さらに桑田のリクエストで、曲終わりは吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)がハイジャンプで締め、最後のひと言には、「栞(しおり)のテーマ」が名前の由来となった玉井詩織(ももいろクローバーZ)が桑田からプレゼントされたキャップを被り「桑田さんのおかげで、“詩織”という名前になりました!!」と、感激に震える声で感謝を述べた。 後輩たちを送り出すと、「ROCK IN JAPAN、最高!!」のコールで観客たちと記念撮影。そして最後に「いったん我々は卒業させていただきますけども、若い、素晴らしいアーティストたちにこれから頑張っていただいて、今後も素晴らしいこのフェスが素晴らしくあるように、信じております。お身体に気をつけて。みなさん、近いうちにまたどこかでお会いしましょう! サザンオールスターズでした~!!」と桑田が締め、後輩たちの名前とこのフェスへの感謝を叫びながら、ステージを去っていった。 日本で暮らしていて、サザンオールスターズの曲をひとつも知らずにいるなんて、およそ不可能だと思う。それくらい彼らの曲は私たちの記憶の深くに結びついていて、目の前でそれが流れ出した瞬間、体を揺らして歌わずにはいられなかった。そしてそれはきっと、今日出演していたアーティストたちも同じだったはずだ。どこまでも自然体で、過去最多のオーディエンスと後輩たちを圧倒的なパフォーマンスとユーモアで楽しませてくれたサザンオールスターズ。彼らと楽しみつくしたこの夏の終わりもまた、私たちの大切な記憶のひとつになった。今冬、新しいアルバムの発売も予告しているサザンだが、また次に“どこか”で5人と会えるのはいつになるのだろうか。今から待ち遠しい。 Text:Maiko Murata Photo:ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA ◎公演情報 【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA】 2024年9月14日(土)、15日(日)、21日(土)、22日(日・祝)、23日(月・振休) 茨城・国営ひたち海浜公園 その他の画像 <セットリスト(サザンオールスターズ)> 1. 女呼んでブギ 2. ジャンヌ・ダルクによろしく 3. My Foreplay Music 4. 海 5. 神の島遥か国 6. 栄光の男 7. 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Massage~ 8. いとしのエリー 9. 思い過ごしも恋のうち 10. 東京VICTORY 11. 真夏の果実 12. 恋のブギウギナイト 13. LOVE AFFAIR~秘密のデート~ 14. マチルダBABY 15. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY) 16. みんなのうた 17. マンピーのG★SPOT En.1 希望の轍 En.2 勝手にシンドバッド