北朝鮮の「人工衛星打ち上げ失敗」によって明らかになった金正恩の「真の目的」
北朝鮮は、5月27日22時44分ごろ、事前の予告通り北西部沿岸の東倉里(トンチャンリ)衛星発射場から偵察衛星を打ち上げたものの、約2分後には第一段階の飛翔中に何らかのトラブルが発生し、空中で爆発(自爆システムが作動)したものと見られる。これを裏付けるように、韓国軍は「北朝鮮側の黄海海上で(ロケットが)多数の破片として探知された」と発表した。 【写真】「台湾有事Xデー」に日米はどこまで戦えるのか《日米中・戦力比較図》
あっさりと失敗を認めた北朝鮮
一方、当事者の北朝鮮側は、この打ち上げの約1時間半後に、国家航空宇宙技術総局副総局長が「ロケットは1段目の飛行中、空中爆発した」と発表し、原因については初歩的な結論として「新しく開発した液体酸素+石油エンジンの作動の信頼性に事故の原因がある」と結論付けていた。 また、29日付の北朝鮮「労働新聞」によると、28日には金正恩総書記が、弾道ミサイルなどの開発を担う国防科学院を訪れて演説し、この中で、「1段目のエンジンの異常で自爆システムが作動した」と27日の衛星打ち上げの失敗を認めた上で、「今回の打ち上げは実を結ばなかったが、われわれは失敗を恐れて萎縮するのではなく、さらに大きく奮い立つことになる」と、原因を究明して再打ち上げに向け前進することを示唆した。
やはり真の目的は偵察衛星ではなかった
今回の北朝鮮による偵察衛星の打ち上げによって、明確になったことがある。それは、「北朝鮮は今回、偵察衛星を軌道上に乗せることに固執していなかった」、ということである。何よりそれは、今回の打ち上げ失敗は、ロケット技術の初歩的な失敗によるものであり、昨年3回にわたって実施(2回は失敗)した衛星打ち上げ技術の延長線上にはなく、「新たに開発した全く異なる種類のロケットを使用した」、という部分にある。 つまり、昨年12月12日の拙稿(金正恩が軍事衛星を打ち上げ続ける「真の理由」...北朝鮮に訪れている「武器輸出特需」の正体とは)で述べたように、北朝鮮の真の目的は、やはり「新たな弾道ミサイルや衛星打ち上げロケットの技術開発そのものにある」ということなのである。 そもそも、どうしても今回偵察衛星を軌道に乗せたいと固執していたならば、昨年と同様のロケットを使用するのが最も確実な手段であるはずなのに、失敗するリスクが高い新たな種類のロケットを使用したということは、たとえ打ち上げが失敗して搭載している偵察衛星を失ったとしても、それは十分許容範囲の内だということに他ならない。 昨年2回続けて失敗した時のように、金総書記が今回はその失敗を技術者(国防科学院)に対して強く叱責することもなく、逆に励ますような演説を行ったのも、この度の失敗が織り込み済みであったことを良く表している。 おそらく、今回搭載していた偵察衛星は、さほど高額な投資をして開発した「虎の子の偵察衛星」というほどの代物ではないのだろう。