Wリーグ決勝残り5分44秒、内尾聡菜が見せた優勝へのスティール。スタメン辞退の過去も町田瑠唯から「必要なんだよ」
優勝後に贈られた町田からのメッセージ「必要なんだよ」
いつの間にか、チーム在籍年数で町田に次ぐ2番目の古株となった内尾。それだけ、メンバーと共有してきた悔しさは多い。 優勝を決めた後、表彰式の壇上では、堂々と町田の隣で優勝プレートを掲げた。「私が気遣っちゃって、『ここ隣キキさんじゃなくて大丈夫ですか?』って聞いたんです」と話す、控えめな影の功労者に、町田は「大丈夫だよ。キラでいいよ」と答えたという。 叱責しながら内尾を使い続けたBTヘッドコーチは、優勝後のX(旧Twitter)で、彼女の写真をつけて、こう投稿した。「The unsung hero #25 (知られざるヒーロー)」。この投稿を内尾自身は知らず、町田からのリポストで知ったという。そこには長年の苦労と喜びを分かち合った仲ゆえの信頼のメッセージ、「本当に必要なんだよ」と添えらえていた。
きついと思う先には、違う景色が本当にある
スタメン辞退を申し出るほど、才能の差に苦しんだ内尾は、今季のスモールフォワード部門で、日本代表・赤穂ひまわりに次ぐ第2位に評価される選手にまでなった。それを伝えると「え、知らんかった(笑)」と、内尾は自然体で話す。彼女だからこそ。自信を持つことが簡単でない、多くのプレーヤーに向けて贈るメッセージは何か聞いた。 「自分は性格的に頑固で負けず嫌いで、悔しさとかやめたい気持ち、逃げ出したくなる気持ちとかが本当にあった。でも、それ以上に『じゃあ、もっとやってやるぞ』という気持ちが勝って、今がある。だから、今一番きついと思っている先には、何か違う景色が、本当にある。それは超えてからじゃないと見えないものだと、自分自身すごく感じています」 自分が何をやるべきかフォーカスして、やるべきことをやれば、いつか視野は広がる。「それを私生活でもプレーでも、ずっと示してくれたのは、先輩たち」と話す内尾。そのきっかけをくれた母は『あんた(富士通に)入ってよかったやろ』と話し、表彰台に上る娘を見て、身を乗り出し手を振り喜んでくれた。 努力は才能を超えないだろう。しかしまた、努力なく才能が結果につながることもない。自信はなくとも自覚をもって、継続の上に成功をつかんだ内尾に、賞賛の拍手を贈りたい。 ----------------- 追記:本編には入らなかったが、町田と林・咲のインタビューで「『キラがすごくふざけてくる』と読んだが本当か?」と聞くと、「ふざけますけど、ルイさんもキキさんも同じぐらいふざけます。これ書いとってください(笑)」と言っていたので、最後に記す。 <了>
文=守本和宏