開発のきっかけは”小児まひ”の弟 車イスをけん引する装置「JINRIKI」災害時の避難をサポート
名古屋市内の百貨店で開催中の「防災フェア」。名鉄百貨店で9回目の開催となる今回、初めて「防災グッズ」を実際に使ってみたり、体験できたりする場が設けられています。車イスを「押す」のではなく「引っぱる」体験をしてみました。 車イスをけん引するための装置「JINRIKI(じんりき)」。その名の通り、取っ手を車イスに固定し、人力車のように引っぱることができるものです。 小さな段差や舗装されていない道路、傾斜がある道を走行する際、車輪の直径が小さな車イスの前輪が引っかかってしまい、走行を妨げることがあります。 「JINRIKI」を取り付けることで、てこの原理で前輪を浮かせ、スムーズな走行を可能にします。 必要な部品は3つ。約30秒で組み立て可能です。散歩や買い物など日常生活でも使用できるほか、災害が発生したときは、素早く安全な避難をサポートすることが期待されています。
車イスを「押す」側としての気づき
「JINRIKI」を開発製造する会社の社長・中村正善さんには、小児まひで手足が不自由なため、車イスを使用していた4歳年下の弟、善八さんがいます。 公園を走り回る友達もいるなか、車イスの弟を押す中村さんは、幼いながらに「車イスは前輪が小さいからいけない」「車イスも前輪を持ち上げて大きなタイヤなら走れる」と気づきます。 善八さんは中学生の時に他界。亡くなって以来、中村さんは車イスとの関わりがほとんどなくなっていましたが、モノづくりのプロではなかった中村さんが「JINRIKI」を生み出すことになったきっかけは、2011年に発生した「東日本大震災」でした。 犠牲者は1万5000人を超えました。その中には「高台に逃げることもできたが、自力での避難が困難な家族や知人が近くにいたため(逃げることを)あきらめざるを得なかった人がいた」という現実を、中村さんは知ったといいます。 中村さんが小学生の時に感じた「車イスも前輪を持ち上げて大きなタイヤなら走れる」という気づきは「商品化できれば人の命を助けられるかも」という発想につながりました。 本格的に商品化を始め、特許取得には1年以上かかりました。こうして、あらゆるメーカー、サイズ、カスタマイズされた車イスに対応できる「JINRIKI」が誕生しました。