激闘王・八重樫が逆転TKOで引退か世界かの究極の選択マッチを制す!
八重樫は究極マッチに勝ち残った。「6ラウンドの打たれ方が心配」という大橋会長は、八重樫にMRI検査を義務づけ、異常がなければ4階級制覇への挑戦へGOサインを出す。 「4階級への挑戦?もちろん。実際オファーがあったしね」 現在、スーパーフライ級には、各団体共に強豪王者が揃っている。井上尚弥(大橋)が返上したWBO王者こそまだ空いているが、ミニマム級時代に統一戦を戦った井岡一翔(SANKYO)も同じく4階級制覇を狙って復帰、9月8日に米国ロスで開催される「スーパーフライ3」に出場し“世界前哨戦”としてマクウィリアムズ・アローヨ(プエルトリコ)と戦うことも決まっている。 「正直、誰もが強い。自信はない。でも自信をつけてからやるのでは遅い。相手は誰でもいいのでやりたい」 史上最高のノンタイトル戦を勝ち抜いた“激闘王”には未来が開けた。 「ボクシングは最高。そのボクシングを続けられるのは幸せだな、とつくづく思うんです。あと、もうちょっとだけ、そのボクシングをやらせて欲しい」 プロ通算33戦目を終えた八重樫の言葉は重たかった。 対する向井は、「ちょっと休んで考えます」と進退についての決断を保留した。 だが、こうも言い、引退を示唆した。 「八重樫さんのパンチは、それほどでもなかったんです。だから、大丈夫だと、自分で天井を決めてしまったのが間違いだった。気迫が八重樫さんの方が強かったのでしょう。この試合は財産にはなる。でもシーサケットともやり、3階級王者ともやり、世界がどんなものかを僕はわかっている。正直(世界再挑戦は)厳しいと思う。ひざが悪くて、ロードワークも満足にできていなかった。その走る量の差も出たと思う。ああしておけば、という後悔もあるが、今の気持ちはスッキリしている」 傷だらけの姿で後楽園ホールを後にするとき、向井は、その黄色いビルを振り返って独りごちた。 「後楽園……日大時代のリーグ戦以来だったけど満員のお客さんの前で戦えて最高に楽しかった」 30代のボクサー2人が人生をかけたノンタイトル戦。それは世界戦にも匹敵するほどに、とても激しく美しかった。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)