フランス、4日にも政権崩壊の恐れ-極右と左派連合が不信任案提出
(ブルームバーグ): フランスのバルニエ首相は2日、2025年度政府予算案のうち社会保障財源法案について、議会採決を経ずに成立させる憲法の特例条項を行使すると表明した。
マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党・国民連合(RN)と左派連合「新人民戦線」はこれに反発し、内閣不信任決議案をそれぞれ提出した。バルニエ氏を支える勢力には、左右両派が同調する動きに対抗できる議席はなく、早ければ4日にも不信任が成立し、内閣が倒れる恐れが出てきた。
バルニエ首相は2日の国民議会(下院)で、社会保障財源法案の成立に向け、憲法49条3項の特例条項を用いると宣言。「わが国に不可欠で有益な責任ある財政法を成立させるか、それとも未踏の領域に踏み込むか、決めるのは国会議員のあなた方の責任だ」と訴えた。
国民議会では7月の決選投票の結果、単独で第1党となったRNとルペン氏が重要なキャスティングボートを握る。バルニエ氏がルペン氏の要求をほぼ全て受け入れ、25年度政府予算案を修正したにもかかわらず、ルペン氏はRNが予算案を引き続き支持しないと述べ、政権崩壊に道を開いた。
不信任決議案は、提出から48時間経過した後に審議を開始し、その後3日以内に不信任投票が行われる。
ルペン氏は「バルニエ氏は1100万人のRN支持者の要求に応えなかった。バルニエ氏は、皆が責任を負うべきと話しており、私たちも責任を全うするまでだ」と語った。
政党間の駆け引きが続く中で、2日のフランス国債は不安定な動きを続けた。フランスとドイツの10年債の利回り差(スプレッド)は、一時は大幅に縮小したものの、その後89ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)まで拡大した。フランス株式市場は、バルニエ氏がRNの主要要求に対する譲歩を発表した直後に一時急騰したが、その後下げに転じた。
少数連立与党は国民議会で過半数議席を大きく下回るため、バルニエ氏が予算案成立のために49条3項を適用する可能性は高いと考えられてきた。フランスの財政にとってとりわけ危険な時期に政治的混乱が発生した格好だ。政府機関閉鎖を回避するには年末までに予算を成立させるか、徴税を可能にする「特別法」の緊急措置や最低限の支出を認める法令で対応する必要がある。