【毎日書評】毎日寝不足つづき…ずっと睡眠時間が足りないとどんな悪影響があるの?
産業医である『職場の医学事典』(池井佑丞 著、ワニブックス)の著者は、多くの労働者が未治療の不健康状態を抱え、その影響が仕事のパフォーマンスや生産性に深刻な影響を及ぼしていることを実感しているそうです。 とくに問題視すべきは、自覚症状がないとか、受診や治療に抵抗があるとか、あるいは忙しいなど、さまざまな理由から健康問題が放置されがちだという現実。 たしかに、多忙な現代社会においてはなかなか健康にまで意識を向けられないかもしれません。しかし、それがやがて大きな問題につながる可能性があることも決して否定できないでしょう。 そうした問題に対して効果的に対処するための第一歩は、健康診断とストレスチェック。それらを通じて身体的な問題やメンタルヘルスの問題を早期に発見できれば、適切なケアを受けることが可能になるわけです。 まずは病気や検査について知ることが大切です。この本では、健康管理の重要性とともに、病気や検査に関する情報をなるべく多く、わかりやすくまとめています。読者の皆様には、この本を一読して基本的な知識を得ることから始めていただきたいです。 さらに、日々の生活で健康に関する疑問が生じたときや、具体的な健康管理の方法を知りたいときに、この本を辞書のように活用していただければと思います。(「はじめに」より) つまり本書は、健康管理について知っておきたい基本的な情報を凝縮した、実用性の高い一冊だというわけです。きょうは第4章「健康のためのおすすめ習慣」に焦点を当て、日常的に意識したいいくつかの習慣をご紹介したいと思います。
睡眠時間が7時間未満の人は…
健康を維持するために最適な睡眠時間は人それぞれ違いますが、一般的には7時間とされているようです。 医療機器会社「レスメド」の「2023年世界睡眠調査」によると日本の平均睡眠時間は6.5時間で、調査対象である12カ国のなかでもっとも短いのだとか。しかも日本人にとっては、睡眠障害が大きな問題になっているというのです。 ご存知のとおり睡眠障害とは、「昼間は活動して夜間は眠る」という、本来であれば当たり前のことができなくなり、日常生活に影響が出ている状態。日本人では約5人に1人が睡眠に関して悩んでいるといわれています。また睡眠不足だと、風邪やうつ病といった心身の不調をきたしやすくもなるのだといいます。 例えば、睡眠時間と風邪の引きやすさの関連を数値にした際、睡眠時間が7時間以上の人と比較して、5~6時間睡眠の人は4.2倍、5時間未満だと4.5倍も風邪を引きやすくなるというデータがあります。 厚生労働省の「過労死等防止対策白書」(2023年)によると、理想とする睡眠時間と実際の睡眠時間にかい離がある人ほど、うつ病になりやすいという結果が出ているのです。このかい離が2時間ある人のうち、うつ病や不安障害の疑いがある人の割合は約3割となっています。(194~195ページより) 残業時間が長い人はうつ病になりやすいといわれることがありますが、残業時間の長さよりも睡眠時間のほうが、うつ病の発症に顕著な影響を与えるということも医学的に証明されているのだそうです。残業時間の長さが睡眠不足につながり、心身の健康に不調を与えるということです。(194ページより)