関空被災で「伊丹」「神戸」に振り替え便 「3空港の一体運用」議論は進むか
台風21号の影響による浸水などで、大幅な減便を強いられている関西国際空港の対応策として、近隣の大阪国際(伊丹)空港と神戸空港が国際便を含む振り替え便を受け入れることが決まりました。 伊丹空港が40便、神戸空港が30便と1日最大で計70便を受け入れます。伊丹空港の周辺10市でつくる大阪国際空港周辺都市対策協議会(10市協)と神戸市が、国からの要請を受け入れた形ですが、あくまでも「関空復旧までの期間」という姿勢を示しています。しかし今回の災害を受けて「防災対策も含め関西三空港のあり方を再検討すべき。特に神戸空港をもっと活用すべき」という声もあり、恒久的な三空港連携に議論が進んでいくか注目されます。
アジア入国者が一番多い関空
今回の振り替え便受け入れですが、その背景には関西経済が好調に推移してきたインバウンド(訪日外国人客)に引っ張られてきた面があります。 アジア太平洋研究所(APIR)が9月7日に公表したレポートによると、「2017年の訪日外国人数は 2869 万人、関西は 1207 万人と約4割を占めており、なお増加傾向にあります。関空はアジアからの入国者数に限れば、日本の空港で最も多い」と分析。2017 年の関西全体での訪日外国人消費額は、関西域内総生産(GRP)の約1%を創出しており、「関空の早期再開が極めて重要」と指摘しています。 関空は比較的被害が少なかったB滑走路と第2ターミナルを利用して、9月7日に一部運用を再開しましたが、平常時の2割程度の発着にとどまっていました。14日から第1ターミナルの南側カウンターが再開、順次復旧作業を進める見通しです。タンカーが衝突した連絡橋の復旧も急いでいますが、空港へのアクセス制限はしばらく続く可能性があります。こうしたインバウンドへの影響をできるだけ食い止めるため、国や各自治体も異例のスピードで振り替え便受け入れを決断したともいえます。 上村敏之・関西学院大教授(公共経済学)は「インバウンドの拡大は安倍政権の大きな柱であり、関空の落ち込みによる関西経済の低迷は日本全体に波及しかねない。かつてコンテナ取扱量が世界トップクラスだった神戸港が、阪神大震災の影響で落ち込み、釜山(韓国)などに需要を奪われたトラウマもあり、国などは必死の姿勢を示している」とみます。