関空被災で「伊丹」「神戸」に振り替え便 「3空港の一体運用」議論は進むか
運用数を増やす余地がある神戸空港
また大阪は2025年国際博覧会(万博)の誘致を目指しており、今回の関空の機能低下を逆風にしたくないという面もあります。 上村教授は「伊丹空港は運用時間が朝7時から夜9時までに制限されており、発着枠に余裕がなく、受け入れ数はギリギリだろう。関空ができるまで、伊丹は国際空港だったが、現在はリニューアルなどもあり、ほぼ国内線専用空港として機能している。CIQを設置するスペースも余裕がなく、簡単なことではない」とみます。 CIQとは税関(CUSTOMS)、出入国管理所(IMMIGRATION)、検疫所(QUARANTINE)のことで、国際便の発着には不可欠な施設。暫定的な受け入れであれば特別施設を作ることも考えられますが、恒久的に施設づくりには空港全体のデザインを見直す必要に迫られそうです。 一方の神戸空港。現在の運用は1日上限60便に制限されており、実際にはまだ運用数は増やす余地があります。上村教授は「ピーク時には1時間に7便程度が離発着できるとみられる。これをもとにすれば(今回の受け入れ30便を含めても)、さらに余裕がある。ターミナルビル横に土地も少し余っており、CIQもそれを使えるかもしれない」とみます。 もともと神戸空港は24時間運用できる海上空港として建設されましたが、関空は国際ハブ空港、伊丹は国内線の基幹空港、神戸空港は「ハブ機能をサポートする地方空港」という位置づけになっており、発着枠の上限が設けられている経緯があります。「神戸空港は滑走路が短いため、すべての国際線を受けて入れることは難しいかもしれないが、アジア向けの国際便などは十分対応できるだろう。24時間体制が実現できれば当然、便数も大幅拡大できるが、空港へのアクセスをどうするかなど課題もある」(上村教授)。
3空港の一体「運営」は事実上スタート
関西の3空港については今年4月、関空と伊丹を運営する関西エアポートの100%子会社が神戸空港の運営を神戸市から引き継ぎ、3空港の一体運営は事実上スタートしています。 上村教授は「普段、使わないのに、バックアップ機能を持つとなるとコストがかかる。したがって恒常的に使うことが大切。とりわけ神戸については、発着枠に余裕があり、24時間運用可能であることから、臨時的ではなく、恒常的に関空の機能を移すことができる。ただし、3空港には過去の歴史的経緯があって簡単ではなく、いまの緊急時での議論はかえって混乱を招く。平時になってから、『3つで1つの空港を運用する』という議論が進むことを期待したい」と話しています。