第一印象からの“変化”が見事だった入倉役・岡部ひろき

　新潟編で、寅子が一緒に仕事をすることになった航一の部下で、新潟地方裁判所・刑事部で判事補を務めている入倉（岡部ひろき）。勤務中、手鏡を見ながら櫛で髪をとかすなど、あまり良い印象を持てないキャラクターとして登場した入倉は、偏見と憶測で物事を判断するところがあり、しばしば寅子と対立。 　だが、戦争中の航一のつらい過去の話を聞いて、突然泣き出した入倉は、「俺って本当に人を見る目がない。俺、星さんはつまらなくて退屈な人だとばかり……。でも、ずっとそんなつらい気持ちを抱えておられたなんて」と、自らを反省し、「佐田さんのことだって、小うるさいクソババアとしか思ってなくて」と、心の内を明かした。 　「私も思っていたわ、差別主義のクソ小僧って。だから、おあいこ」と、言い返して場を和ませる寅子の対応はさすがだ。その後、寅子と入倉は謝り合って、良い雰囲気に。入倉も、寅子から影響を受けた若者の1人となった。 　入倉を演じた岡部は、寅子の父・直言役の岡部たかしの息子で、『虎に翼』は、2023年度前期の『らんまん』に続いて、2度目の朝ドラ出演。NHK大河ドラマ『青天を衝け』（2021年）にも出演経験のある岡部は、2024年は『虎に翼』のほか、『燕は戻ってこない』（NHK総合）や『TOKYO VICE Season2』（WOWOW）などでも活躍している。 　ちょっといけ好かない態度を取ってきた入倉が、気持ちを素直に表すようになる変化を好演し、強い印象を残した岡部は、もっともっと演技を見たくなる若手俳優の1人になった。今後の彼の出演作に注目していきたい。