「消滅可能性自治体」県南に集中…10年前と構図変わらず 県、工業団地整備や振興策で格差解消めざす
経済界有志らでつくる「人口戦略会議」が4月に示した「消滅可能性自治体」。若い女性の減少幅を基に、熊本県内の18市町村を「消滅の可能性がある」自治体と位置付けた。当該自治体は、県南部を中心に山間地や天草地域に集中しており、これまでも指摘されてきた県土の「南北格差」を裏付けた形だ。 人口戦略会議の資料によると、18市町村は、水俣市、上天草市、天草市、美里町、和水町、小国町、産山村、高森町、山都町、氷川町、芦北町、津奈木町、多良木町、湯前町、相良村、山江村、球磨村、苓北町。 10年前の前回分析から、人吉市、長洲町、あさぎり町、南関町、南阿蘇村、甲佐町、錦町、水上村、五木村の9自治体が消滅可能性自治体から脱却し、新たに産山村が追加された。県南部や山間部に集中する構図は変わっていない。 消滅可能性自治体は、子どもを産む中心世代となる20~30代の女性が、2020年から50年にかけて50%以上減ると推計された市町村。若年女性の人口は、県内45市町村の全てで減る見通しだが、34市町村は前回と比べて減少率に改善がみられている。
一方、減少率が20%未満と、百年後も若年女性が半分近く残る「自立持続可能性自治体」は、合志市、大津町、菊陽町、南阿蘇村、御船町、嘉島町、益城町の7自治体。熊本都市圏域周辺であることに加え、菊陽町への台湾積体電路製造(TSMC)進出に伴い、半導体関連産業の立地が相次ぐ周辺市町村へ及ぼす影響の一端が見て取れる。 経済面に加え、地域の人口動態にも表れた県土の南北格差。県南部は熊本都市圏域や熊本空港などへのアクセスが難しく、地域の活力となる企業立地が鈍いとされてきた。 こうした格差の解消と均衡ある発展、人口流出対策として、県は今後、八代地域に新たな県営工業団地の整備を進めるとともに、県南地域の農水産物を生かして食関連産業の活性化を図る「県南フードバレー構想」などの振興策も継続的に取り組む考えだ。(丸山宗一郎) ◆〝消滅〟免れた南阿蘇村と五木村、移住推進や子育て支援策充実が好影響 前回分析で消滅可能性自治体と名指しされた南阿蘇村と五木村は、若年女性人口の減少率が大きく改善し、再度の指摘を免れた。