【特集】「おかあさん、おとうさん限界です」 残業207時間50分 夢半ばで命を絶った若き医師 「過重な労働を負荷していたという認識はない」食い違う認識と病院が主張する“自己研鑽”の実態
兵庫県神戸市にある甲南医療センターの26歳の若手医師が過労自殺した問題で、医師に違法な時間外労働をさせたとして運営法人や院長らが書類送検されました。遺族や元同僚の医師が語ったのは、過酷な勤務実態でした。 【動画で見る】「おかあさん、おとうさん限界です」残業207時間50分…夢半ばで命を絶った若き医師 食い違う認識と病院が主張する“自己研鑽”の実態
1か月の207時間50分、休日は100日連続不取得…「おかあさん、おとうさんの事を考えてこうならないようにしていたけれど限界です」
2022年5月、一人の若い医師が自ら命を絶ちました。高島晨伍さん(26)。仏壇の横には1着の白衣が掛けられていました。 (母・淳子さん) 「これをすごく気に入っていたので、棺に白衣を入れてやろうとしたら、兄が『もう働かせてやるな』と『汚れて真っ黒になってしんどい思いした白衣を入れてやるな。もう働かせてやるな』と言ったので…」
晨伍さんは亡くなる当日の朝、自宅で自殺を図ったものの未遂に終わり出勤。しかし、勤務を終えた夕方、再び自宅に戻り命を絶ちました。第一発見者は母の淳子さんでした。晨伍さんは医師である父と兄の背中を追い、神戸大学医学部に進学。その後、研修医として勤務を始めたのが神戸市東灘区の「甲南医療センター」でした。医師3年目となった2022年4月からは、より専門的な研修を受ける専攻医として勤務。しかし、「当番業務としての外来患者の診療」・「主治医としての入院患者の診療」・「レポートの作成」・さらに、「学会発表の準備」なども重なっていきました。
労働基準監督署によると、亡くなる直前1か月の時間外労働は207時間50分。過労死ラインとされる月80時間を大幅に超えていて、休日は100日連続で取得していませんでした。 晨伍さんの遺書にはこう綴られていました。 「おかあさん、おとうさんの事を考えてこうならないようにしていたけれど限界です」
「病院として過重な労働を負荷していたという認識はない」食い違う認識の裏にある、医師の「自己研鑽」
労働基準監督署は、上司からの指示があったと判断。自殺は業務によるものと結論付けましたが、病院側はこれに真っ向から反論しました。 (甲南医療センター・具英成院長) 「病院として過重な労働を負荷していたという認識は持ってございません。特に時間外労働については、自学・自習の時間と生理的な欲求に応じて寝て過ごすということも多々ございます。正確にはなかなか把握できないということがございます」 病院側は207時間50分という数字には睡眠時間なども含まれ、本人から申告を受けた2022年4月の残業時間は約30時間だったと主張しました。そのうえで、労基署が認定した時間の大部分を占めるとしたのが「自己研鑽」でした。「自己研鑽」とは、自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習や研究のこと。病院側は「自己研鑽」について、こう表現をしていました。 (具院長) 「医師というのは学会報告あるいは研究活動・教育活動そういった諸々のことで育っていく職業なんですね。まさに生涯教育で、一生涯勉強だというような典型的な仕事になる」
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