【特集】「おかあさん、おとうさん限界です」 残業207時間50分 夢半ばで命を絶った若き医師 「過重な労働を負荷していたという認識はない」食い違う認識と病院が主張する“自己研鑽”の実態
甲南医療センターで過去に専攻医として働いていた医師は、病院での勤務実態をこう証言しました。 (甲南医療センター・元専攻医) 「救急車を応需することで、病院にとって収益になるので、それで『断らない救急』をひたすら打ち出していたというのが院内医師の共通の認識でありまして、その入院患者さんの主治医をやっている人たちっていうのは基本、全員専攻医なんですよ。ものすごい数の入院患者さんを持っているのに、日中勤務時間帯は当番業務で埋めつくされて、その時間外に入院患者さんを診るしかなくなるので、朝7時ごろから回診をはじめて、必然的に帰るのは(夜の)10時半、11時、12時というのはよくあることでしたね」 そして、「自己研鑽」については━。 (元専攻医) 「自己研鑽を逆手にとって利用しているのが当院だと思います。一般的な病院だとそんなことはないんですよね。若手の医師は、良い医師になりたいと思って頑張っているわけですし、そういう医師のために自己研鑽ということばを使うべきだと思いますし、もちろん病院に残って、手術を見たりとか勉強したい気持ちは皆あるので、そういったところで自己研鑽とされるのは全く問題ないと思うのですが、当院のようにそれを悪用して、物言わぬ労働力として搾取するような施設は厳しく処罰されるべきだと思います」
「過酷な労働環境の問題が息子の死をきっかけに少しでも改善されるように」遺族が訴える“医師の働き方改革”
高島晨伍さんの遺族は2023年夏以降、活動を本格させました。厚生労働省には、医師の働き方の改善と医師を労働者として預かる病院側の管理・徹底を求めました。そして、2023年12月15日、東京の外国特派員協会で、海外メディアにも訴えました。 (高島晨伍さんの母・淳子さん) 「息子はもう患者の命を救うことはできませんが、彼がその命と引き換えに投げかけた過酷な労働環境の問題が彼の死をきっかけに少しでも改善されるようにと私たちは努力します。これ以上若手医師が過労死することがないようにしていくことが私たちの使命です」
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