ドウェイン・ジョンソンとクリス・エヴァンスが活躍 『レッド・ワン』の“クリスマス精神”
いまや、最も高額な出演料を誇る俳優の一人となった、ドウェイン・ジョンソン。そして近年さまざまな役柄に挑戦して、キャプテン・アメリカのイメージを払拭しつつある、スター俳優クリス・エヴァンス。この二人が活躍する、推定2億5000万ドルの巨額が投じられたクリスマスムービー、『レッド・ワン』が劇場公開された。 【写真】『レッド・ワン』場面カット(複数あり) 「レッド・ワン(赤いやつ)」とは、劇中でのサンタクロースのコードネームのことだ。クリスマス・イヴを前に、突如何者かに誘拐されてしまったレッド・ワン(J・K・シモンズ)を、サンタ護衛隊長・カラム(ドウェイン・ジョンソン)と、追跡が得意な賞金稼ぎジャック(クリス・エヴァンス)が協力して奪還するべく動き出すのである。 サンタクロースを題材とした映画に、そのまんまのタイトル『サンタクロース』(1985年)という一作がある。この映画では、妖精(エルフ)たちがおもちゃを用意したり、一晩でサンタが世界中の子どもたちにプレゼントを配ることのできる理屈が紹介されたりなど、サンタの存在を証明するかのように、サンタが担う役割の具体的な描写がなされた内容が印象的だった。その意味では、コメディ『サンタクローズ』(1994年)も同様だろう。 『レッド・ワン』の冒頭では、サンタの存在を否定する少年が登場するが、本作もまさに、サンタに懐疑的な子どもたちに、サンタの世界や、実際にプレゼントを配る様子を実際に見せることで、サンタの存在を裏付けるかのような趣向が用意されている。アメリカではショッピングモールで、サンタが子どもたちと交流するイベントがよく催されているが、本作ではそんな“モールのサンタ”が、やはり本人なのだということを示すシーンもある。つまり、「全ての“サンタ”は本物だ」という描き方をしているのだ。 その意味で本作は、映画『サンタクロース』がかつてサンタの実在を具体的な映像によって、子どもたちに示してみせたのと、同等の役割を果たしているように感じられる。だが、『サンタクロース』や『サンタクローズ』のアメリカでのレイティングが「G」、つまり全年齢対象なのに対して、本作は「PG-13」となっているのだ。「PG-13」というのは、13歳未満の子どもには相応しくない内容で、保護者の注意が必要だということを表す指標だ。 その理由は、サンタ誘拐事件解決の過程で描かれるアクションシーンが、やや暴力的なものになっているからだろう。つまり本作は、サンタクロースを題材にしながら、少なくとも小さい子どもたちに夢を与えることを優先した作品として提出されているわけではないことになる。 本作の監督ジェイク・カスダンは、映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年) 、『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019年)で、主演のドウェイン・ジョンソンと組んで、興行的成功を得ている。その前提を考えれば、本作がクリスマスムービーとしてよりも、同様のアクションアドベンチャーとしての成功が期待されていた企画なのだということが類推できる。ちなみに、これら『ジュマンジ』シリーズですらレイティングは「G」に収まるものだった。