頭金なし、漢の96回払いで買った14年オチのケイマンと、新車並行でもうすぐ20年のムルティプラ エンジン編集部員のちょっと古い愛車を公開! 愛があればなんとかなる!!
ちょっと古いクルマの楽しみ方とは?
エンジン編集部のパーキングには、いつもちょっと 古いクルマが駐まっています。エンジン・ウェブで長期リポートをしているシトロエン・エグザンティア以外にも、なかなか面白そうなクルマがいるんです。そこで今回、編集部の4人の4台の愛車、ポルシェ・ケイマン(2010)、フィアット・ムルティプラ、マツダ・ロードスター(NB)、シトロエン・エグザンティアを一堂に集めてみることに。あれ、でも1台姿がないような……。 【写真20枚】96回払いで買った14年オチのケイマンと、新車並行でトラブを幾度も乗り越えてきたムルティプラ エンジン編集部員のちょっと古いクルマの詳しい写真はこちら ◆一番若手が一番いいクルマに乗ってる(笑) 上田 モータージャーナリストに続いて本誌編集部員にも、なぜ今、ちょっと古いクルマなのかを、愛車を紹介してもらいつつ語ってもらいましょう。クルマが新しい順にいくと、最初はアルバイトの大手くんのケイマン。22歳で一番の若手です。 塩澤 おいおい、一番若手が一番いいクルマに乗ってないか?(笑) 大手 いわゆる987、初代ケイマンの後期型で、最初の水冷フラット6の弱点とされているインターミディエイト・シャフトのないモデル。内装もお洒落な茶系で、値オチが少ないMTです。 上田 なんか手堅いねぇ。ちょっと若手にしては守りに入りすぎでは。 大手 でも頭金なし96回払いなので。乗り換え時の下取りも考えて。 塩澤 それはチャレンジャーだ! 村山 大手くんは家族のアルファ・ロメオ147のトラウマがあるんです。以前、連載「若者だってクルマ好き!」にも登場しているんですが。 大手 実家には僕が生まれた時から22年、父が乗る147があって、これが本当によく壊れて。家族で乗っている時に立ち往生してレッカーで運ばれたり、コンピュータが見つからなくて半年不動になったり……。 上田 よくない英才教育だ。 大手 小さい頃はスーパーカーも好きだったんですが、あるとき父の雑誌を読んでいて、急にアルファ・ロメオの75が格好良く見えたんです。一同 (笑) 大手 分岐点だったんでしょうね。それからちょっと古いクルマが欲しくなった。でもそういうクルマは今、軒並み値段が上がって、部品も手に入りにくい。まだ社会人にもなっていないので、大きな故障があったらどうしようもなくなっちゃう。そこで買ったのが少し新しいアルファ・ロメオ・ブレラでした。 上田 自分で直す手もあるよ。 大手 実は人生最初のクルマがユーノス・ロードスターなんですが、それもまだ持っていまして、DIYをして楽しんでいます。 塩澤 え! 2台持ちなんだ! 大手 僕にとってブレラから乗り換えたケイマンは、価格的にギリギリなんとか手に入るスーパーカーでもあるんですよ。 上田 その割にはアウトドアだとか、けっこう使い込んでいるよね。 村山 径の大きなスタッドレス・タイヤを履いていると911ダカールみたいで格好はいいけど。 大手 147を見ていたから使い倒したくて。あと、若いうちに色々なクルマに乗りたい。そうして、最終的に添い遂げるクルマを選びたい。今も段付きのジュリアが欲しい。 上田 完全なる純粋培養だ。 塩澤 手堅いけど、ちょっと古いクルマが、新車よりずっと安価に手に入るという点をうまく利用している。実際乗って使えているし。 大手 ロードスターでは北海道から九州まで行きました。ケイマンでも行きたい。今のところ壊れなそうな安心感はあるんですが、一発何かあったら、という恐怖もあります。 ◆デザインと哲学に共感 村山 じゃあケイマンの次に新しいのは……ムルティプラですね? 塩澤 もうほぼ20年オチだけどね。 上田 4人中、唯一中古車ではなく新車に近い状態で購入しています。 塩澤 2003年モデルを2006年に並行輸入で買いました。走行距離は20kmだったかな。僕は古いクルマが欲しくて買ったんじゃなく、本当にそのクルマが欲しいと思って手に入れているだけ。それまで乗っていたマセラティ・クワトロポルテが修理代がかさむのと、家族が大きくなったり、趣味の自転車が載せられなかったりしている時に出会った。 上田 マフラー・エンド交換時の見積もりがなんと50万円だったとか。 塩澤 娘たちの学費の方を優先してクワトロポルテは断念(笑)。でムルティプラはね、一にも二にもデザインに尽きると思うんだよ。イギリスの雑誌だったかな、世界で一番醜いクルマだって評された。でもニューヨークのMoMAでは永久コレクションに所蔵されている。どうして車体の上半分と下半分ががっちゃんこと組み合わさったようなこんな形なのか、凡人には理解不能。でも、芸術作品にはそういうことも、よくある。この形に刺激を受けて人生が楽しくなる、豊かになる。でも実は道具としてもよくできていて、そこにも共感が得られる。 上田 チーフ・デザイナーのロベルト・ジョリートさんが人生に影響を与えた「クルマのクルマ」として挙げて、本誌でご登場頂きましたね。 塩澤 自分が結婚して子供が生まれた時期に、こういうクルマがあったらいいなぁ、という思いから生まれたんだって。彼が線を引き、世に送り出すところまで結局全部やった。 上田 そういう極少数の人の想いが形になったクルマって、名車というか、世に残りますよね。スペン・キングのレンジローバーとか、ジウジアーロのパンダとか、イシゴニス博士のミニとか。時代的にも、そういうことができた最後のクルマかも。 塩澤 デザインと、それにOKを出した当時のフィアットの哲学みたいなものにも共感したんだ。今ならもう、このシート・レイアウトも含めて、絶対に世に出ないよね。 上田 側面衝突を考えたらこのサイズでは間違いなく無理。デザインもポイントだけど、その当時の技術と法規制だからできたっていうことも大きいと。これまたちょっと古いクルマでしか得られないものです。 ◆編集部員のちょっと古いクルマ座談会、この続きはNBロードスターとエグザンティア篇で! 話す人=塩澤則浩+上田純一郎(まとめも)+村山雄哉+大手淳寛(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦(ケイマン、ムルティプラ、ロードスター)/岡村智明(エグザンティア) (ENGINE2024年5月号)
ENGINE編集部