『古今和歌集』の撰者、紀貫之の百人一首「人はいさ~」の意味や背景とは?|紀貫之の有名な和歌を解説【百人一首入門】
紀貫之、ゆかりの地
続いて、紀貫之にゆかりのある場所を紹介します。 ◆蟻通神社(ありとおしじんじゃ) 大阪府泉佐野市長滝にある、蟻通神社。境内には、紀貫之が蟻通明神に捧げた和歌の石碑と冠之渕があります。紀州から京へ帰る途中、蟻通神社の前を通り過ぎようとしたところ、突然雨が降り、乗っていた馬が倒れます。この時冠を渕に落としたことから、冠之渕と呼ばれています。 通りかかった里人の助言に従って手を清め、神名を尋ねると「ありとほしの神」と教えられ、貫之は神に次の歌を献上します。 かきくもり あやめも知らぬ大空に ありとほしをば 思ふべしやは 【現代語訳】 一面に曇って見分けもつかない大空に星があることがわからないように、ここに蟻通の神のお社があると思うでしょうか。こんな仕打ちを蟻通の神がなさるとは思えない。 結果、神霊が慰められ、馬の病が回復し、無事に京へと旅立つことができました。後に、この里人が蟻通明神の神霊だったと伝えられ、この話は『枕草子』にも記されています。
最後に
紀貫之の和歌は、平安時代の貴族の生活や風景、心の移ろいを生き生きと伝えてくれます。今もなお人々の心を引きつける彼の詠み人としての才能は、和歌の世界をより一層楽しませてくれるはずです。百人一首を通して、紀貫之の世界を旅してみませんか? ※表記の年代と出来事には、諸説あります。 引用・参考図書/ 『日本大百科全書』(小学館) 『全文全訳古語辞典』(小学館) 『原色小倉百人一首』(文英堂) アイキャッチ画像/『百人一首かるた』(提供:嵯峨嵐山文華館) ●執筆/武田さゆり 国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。 ●構成/京都メディアライン ●協力/嵯峨嵐山文華館 百人一首が生まれた小倉山を背にし、古来景勝地であった嵯峨嵐山に立地するミュージアム。百人一首の歴史を学べる常設展と、年に4回、日本画を中心にした企画展を開催しています。120畳の広々とした畳ギャラリーから眺める、大堰川に臨む景色はまさに日本画の世界のようです。
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