NASAがアルテミス計画のスケジュールを見直し 有人月着陸は2026年9月以降に
アメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年1月9日、有人月面探査計画「アルテミス(Artemis)」で計画されている2つのミッション「アルテミス2(Artemis II)」と「アルテミス3(Artemis III)」のスケジュール見直しを発表しました。アルテミス2は2024年11月から2025年9月以降に、アルテミス3は2025年から2026年9月以降に、それぞれ延期されています。【最終更新:2024年1月11日10時台】 直近のロケット打ち上げ情報リスト NASAのアルテミス計画は月面での持続的な探査活動や将来の有人火星探査を見据えた取り組みで、1960~70年代に実施された「アポロ計画」以来となる有人月面探査が行われます。同計画では月を周回する有人拠点「ゲートウェイ(Gateway)」も建設される予定で、欧州宇宙機関(ESA)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、カナダ宇宙庁(CSA)、それにアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)もモジュールの製造に参加しています。 2025年9月に延期されたアルテミス2は地球と月周辺の往復に用いられるNASAの新型宇宙船「オリオン(Orion、オライオン)」の有人飛行試験にあたるミッションで、4名のクルーが月周辺を飛行した後に地球へ帰還します。アルテミス3はアルテミス計画初の有人月面着陸を行うミッションで、2名の宇宙飛行士が月着陸船「Starship HLS(スターシップHLS)」に搭乗して月の南極へ降り立ち、永久影に埋蔵されているとみられる氷(水の氷)の探査などを行います。
NASAによると、アルテミス2のスケジュール見直しは同ミッションに向けた地上での試験結果や2022年11月~12月に実施された無人ミッション「アルテミス1(Artemis I)」の結果を受けて、クルーの安全を確保するために判断されました。アルテミス2で使用されるオリオン宇宙船はすでに製造が進められていますが、解決に追加の時間を要する問題がコンポーネントの試験で確認されたといい、NASAによればバッテリーの問題に対するトラブルシューティングと、換気・温度制御を担当するコンポーネントの課題への対処が進められています。 アルテミス1はNASAの新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」が初飛行したミッションで、無人のオリオン宇宙船が月周辺を飛行した後に地球へ帰還しました。オリオン宇宙船のクルーモジュールには大気圏へ再突入する際に機体を保護する耐熱シールドが底面に装着されていますが、NASAによればオリオン宇宙船の帰還後に行われた検査で耐熱シールドの予期せぬ問題(炭化層の予想以上の損失)が確認されているといい、問題を理解するための試験やデータの評価を含む調査が2024年春に終了する予定とされています。