志穂美悦子「結婚を機にアクション俳優を引退。夫・長渕剛のライブでもらうお花がきっかけで花創作家の道に」【志穂美悦子×草笛光子】
今回のゲストは、花創作家の志穂美悦子さん、かつてのアクション女優の姿そのままに、鍛え上げられた肉体美はいまも圧巻の一言です。志穂美さんの長女で、女優の文音(あやね)さんと共演したことで、草笛光子さんは志穂美さんに再会しました。会うたびに草笛さんは「生きる馬力」を感じるようで――(構成=篠藤ゆり 撮影=天日恵美子) 【写真】ドレスに合わせて生花で作った髪飾り * * * * * * * ◆アクションスターがお花の世界へ 志穂美 今日はゲストに私を呼んでくださって、とっても嬉しいです。 草笛 私もよ。私はずいぶん前からあなたを知ってるわよね。 志穂美 『熱中時代』のときだから、45年も前ですね。私は22歳。 草笛 あのとき、そんなに若かった? そのわりに貫禄があったわね。 志穂美 一応、小学校の先生役だったから(笑)。草笛さんは船越英二さん演じる校長先生の奥さんで。 草笛 うちに、あなたが下宿している設定だったのよね。 志穂美 よく覚えているのは、リハーサルの合間に草笛さんが必ずバレエのバーレッスンをされていたこと。 草笛 やだ、私、おかまいなしね。そんなバカなことしてた?(笑) 志穂美 してた(笑)。どんなセットでも、どこかをバーにして。私は芸能界に入って現場で肉体をエクササイズされる先輩を見たことがなかったから、いつもその姿を尊敬して見ていました。だからいまも覚えてる。 草笛 なんとか皆さんについていこうと必死だったからよ。あなたはそのままずっと女優を続けるものと思っていたけれど、長渕剛さんとのご結婚であっさり引退しちゃったでしょう。びっくりした。 志穂美 望まれたことなので、仕方ないですよね(笑)。私はいまこの瞬間も、通行人のエキストラでいいから、もう一度映像の現場に戻りたいと思っているんですけど。
草笛 もうひとつびっくりしたのが、いつのまにかお花の仕事をするようになったこと。足を上げて、見事なアクションをしていた人が。 志穂美 びっくりしますよね。だって自分でもびっくりしているくらいだもん。 草笛 どうしてそうなっちゃったわけ? 志穂美 子育てが一段落して自分の時間ができた2010年ころ、「私が通っているお花の教室に一緒に行ってみない?」と知人が誘ってくれたのがきっかけなんです。 草笛 それだけ? 志穂美 主人がライブをすると、楽屋にお花をいっぱいいただくじゃないですか。大好きだから自宅に持ち帰って花瓶にポンポンと入れるくらいだったのが、習い始めたら夢中になっちゃって。すぐに基礎と創作の2つの教室に通うようになりました。 草笛 あなたの作るものは、なにしろ大きくてダイナミック。色使いもうんと華やかで。 志穂美 「テーブルにきれいに飾れたらいいな」というところから習い始めて、自分で作品を撮影して写真集にしたんですよ。それを見た方のご縁で、奈良・薬師寺の国宝のお堂をお花で飾るお話をいただいて。とても無理だと尻込みしたんですけど、「これも仏縁です」と言われて、こんな光栄なお話はないと思ってお引き受けしました。 そうしたら、芸術的なアレンジメントをしてみたいと欲が出てきたんですね(笑)。台風のあとのダム湖にトラックで取りに行った流木を使ったり、どんどん大がかりになっています。 草笛 ずっと体を鍛え続けているからできるのよ。 志穂美 確かに肉体が強すぎるので、流木でもなんでも取りに行けちゃう(笑)。お花って体力がないとできないんです。トラックにお花を積んで、活けて、終わったら全部回収して……なので。 草笛 筋肉のつき方や身のこなしが見るからに違うもの。すごいわ。
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