「刑務官の実弾射撃訓練、新人はもうやめます」意外に知らない刑務所の変化 監獄改良→国家が理想とする人間に→力による押さえ込み→事細かな規律→再犯防止へ
▽刑務官に必要な対話力 ―今後の処遇はどうあるべきなのでしょうか。 「『対話モデル』を導入するべきだと考えます。再犯リスクを低めるには、社会に出てから生活を継続できるような力が重要で、その基本が対話です。 決められたルールを守り、指示された作業や指導に参加するといった職員からの指示を待つ処遇では、受刑者は指示待ちで隷属的な人間になってしまい、困っていることを言語化できず、出所後の環境になじめなくなります。再犯者の中には、このような形での生きづらさを抱えた人が多くいます。 刑務所の職員も受刑者も一人の人間として人格や人権を尊重した関係を目指しながら、対話を重視した処遇を実践していくべきです」 ―そんなことが本当に可能なのでしょうか。 「1994年から、階級とは別に矯正処遇官という専門官制度が導入されました。受刑者を更生させ、社会復帰させようという狙いです。 過剰収容への対応で規律管理に力点を置かざるをえなくなりましたが、現場としても変わろうという意識は確かにありました。実際に工場担当の刑務官は、受刑者とも積極的にコミュニケーションを取れています」
―変革期にある中、矯正の現場に求められることは何でしょうか。 「刑務官は対人支援職員であり、その人材の育成とリクルートが重要です。刑務官が単なる施設のガードマンとなってはいけません。 2024年度から新人刑務官の研修カリキュラムが変わることには意義があります。保安警備の中で最も強力なシンボルである拳銃への比重が少なくなる。これは受刑者の立ち直りを促進する、対人支援職としての意味づけを強くするということではないでしょうか」 ※note「共同通信・大阪支社」に記者の手記を掲載しています。