在留外国人の増加で迫られる「保育所のグローバル化」 情報バリアフリーへ専門家が事例紹介
在留外国人が年々増え、その子どもたちが地域の保育所や学校に通う姿をよく目にするようになった。自身も国際結婚して子育てする京都橘大看護学部の那須ダグバ潤子准教授が「保育のグローバル化」をテーマに講演。来日まもない保護者にとって、保育所は「日本社会と深く接する最初の場所」で、現場での「情報のバリアフリー化」が主体的な参加につながると訴えた。 那須ダグバさんは、日本語読解が十分できないナイジェリア人の夫が娘を保育所に送り迎えした経験や調査研究から、外国出身の保護者は「保育士と明るくあいさつを交わしていても、日本語の日誌やお知らせは理解できていないケースが多い」と指摘した。 特に配偶者や子どもが日本語が上手だと、本人への説明は避けられがちだとし、「保護者なのに分からないままでいいのだろうか」と疑問を呈し、情報提供の改善を求めた。 「『空気を読む』は通じない」と、会話を推奨。主語や目的語を省略せず、ゆっくり標準語に近い平易な日本語で語りかけるように助言した。スマートフォンの翻訳機能を活用することも挙げた。 掲示物や文書は「やさしい日本語」で表記したり、「日誌(DAILY DIARY)」のようにタイトルやキーワードを英語で併記したりすることを提案。重要な箇所は「IMPORTANT」「重要的」などのマークを付けると、誰かに聞いたり、後で調べたりできるとした。 また、文書のテキスト化やメール配信を勧めたほか、できる範囲で英訳を添えてほしいとし、ウェブ上の無料翻訳が便利だとした。 保育所への親近感を生んだ事例も紹介。靴箱やロッカーの名札のローマ字表記を全員に付けたことで、外国人の保護者から、ほかの子どもの名前が覚えやすく、わが子から聞く交友関係が分かるようになったと好評だったとした。 こうした情報保障によって、「自分のことを分かってくれると感じれば、保育所に関わりたくなる」と強調した。 講演は、京都府国際センターと多文化共生に取り組む京都府亀岡市の市民団体「オフィス・コン・ジュント」が5日、同市内で開いた。保育士や小学校教員ら約20人が聞き入った。