2歳差の兄弟はコンプレックスが生まれやすい? ピカソに見る、“王位”を奪われた長子の心の傷
きょうだい(兄弟・姉妹)といつも比較されて育った。嫉妬や怒り、憧れをおぼえる。特別扱いされていると感じる。きょうだいのために我慢してきた……。少しでも当てはまると思ったあなたは、「きょうだいコンプレックス」を抱えているかもしれません! 精神科医、岡田尊司氏の『きょうだいコンプレックス』の一部を抜粋してご紹介します。
長子は特別。しかし弟・妹ができると……
長子は、両親にとって、やはり特別な存在として、この世に誕生する。まだ親として未熟な面もあるが、その情熱と必死さは、二番目以降に生まれた子とは違っている。何もわからないゆえに、無我夢中で世話をしようとする。このひたむきな没頭が、経験や巧みさよりも、子どもにとっては重要なのだ。 というのも、愛情の絆である愛着は、懸命に世話をするほど強まるからである。それは、子どもから親への愛着だけでなく、親から子どもへの愛着においても言えることだ。必死に可愛がれば可愛がるほど、その子への愛情が深く感じられるのだ。 他のきょうだいと決定的に違う長子の特権は、愛情を独り占めする期間をもったということである。そのことが人格形成に及ぼす影響は、次に生まれるきょうだいによって、その独占状態がいつ頃破られたかによって、それぞれ異なる。 ある程度、年齢差がある場合には、いかにも長子らしい、鷹揚(おうよう)で、ガツガツしない、のんびりとした性分を示しやすい。それは、一々要求しなくても、周囲が勝手に世話をし、満たしてくれた名残である。つまり、長子であることは、自分が一番で、最優先されるのが当然な境遇で育ったということであり、それゆえに、もう一つの特徴的な一面を示しやすい。それは、知らずしらず一番であろうとし、特別扱いされることを期待することである。自分が一番でない状況や軽く扱われる状況には、ストレスや不満を感じてしまう。一人っ子の期間が長いと、そうした傾向が強まりやすい。 しかし、長子とはいえ、すぐ下にきょうだいができた場合には、親の愛情を独占できた期間は短く、しかも、その地位を奪われるという打撃を味わうことになる。 その結果、安心感に欠け、自己防衛的な傾向や自己顕示的な傾向が強まりやすいが、お人好しな傾向や見通しの甘さといった特別扱いされすぎて育った長子に見られやすい欠点は薄まる。 ただ、このときのダメージからうまく立ち直れないと、その後の人生でも困難を抱える要因となる。「王位を追われた王」は、失われた地位を回復しようとして、攻撃的になったり、要求がましくなったり、自己顕示的になったり、見栄を張ったりする。また、自分の領分を守ろうとして、金銭に細かかったり、物に執着したり、吝嗇(りんしょく)になったりすることもある。