2歳差の兄弟はコンプレックスが生まれやすい? ピカソに見る、“王位”を奪われた長子の心の傷
画家ピカソの栄華の終わり
画家のパブロ・ピカソは、長子に生まれ、両親の愛情を独占したが、その栄華も、三歳のとき、妹ができて終わりを告げる。彼は混乱し、父親にべったりになり、学校に通うようになっても、父親と一緒でなければダメだった。 画家で、美術館長だった父親は、息子に付きっきりで絵を教えた。だが、母親の関心を奪われた心の傷が癒えたわけではなかった。後年の激しい女性関係を衝き動かしていたのは、満たされることのない愛情飢餓と注目への欲求であった。 下のきょうだいの方が活発だったり、優秀だったりして、長子の地位が脅かされた場合にはダメージが残りやすく、自信のない性格になったり、妬み深い性格になることもある。 精神病院の入院患者を調べた研究によると、長子の割合が期待されるよりも高くなっていたが、この結果は、アドラーに従えば、下にきょうだいが生まれ、「王位」を奪われた心の傷が影響しているということになる。 2歳くらい離れて下にきょうだいが生まれた場合には、見捨てられた不安や頑固な傾向が強まりやすい。これは、2歳頃が、いったん離れ始めた母親に再び執着する「再接近期」という時期に当たっていて、このときに母親の関心が下のきょうだいに移ってしまうと、母親を奪われたという心の傷が強く残りやすいためである。 年齢差が3歳以上あると、もっとも傷つきやすい時期は過ぎるが、親の対応次第では、かなり年齢差があっても、自分の地位を奪われたという感覚を抱いてしまう。 通常は、年齢が開くほど、親との愛着がしっかり築かれているうえに、ずっと年下の弟や妹が、自分の優位性を脅かす危険は小さいので、自分が独占していた地位を幼い存在に譲っても、自分が見捨てられたという受け止め方はしない。