衆院補選で自民が全敗:総裁選・衆院解散の戦略に影響:金融政策・為替介入にも影響か
補選で自民全敗も「岸田おろし」の動きは強まらないか
4月28日に投開票が行われた衆院東京15区、島根1区、長崎3区では、いずれも自民党が議席を失った。自民党は2つの不戦敗を含め、すべての小選挙区で敗北したのである。他方で、立憲民主党は3戦全勝となった。 唯一自民党が候補者を両立した島根1区は、自民党の細田前衆院議長の死去を受けた選挙で、立憲民主党元職の亀井氏が自民新人の錦織氏を下した。「政治とカネ」の問題が、自民党の強い逆風となった。 衆院選の前哨戦となる衆院補選の結果は、過去にも政局に大きな影響を与えてきた。2008年には福田政権が4月の衆院2区補選で大敗し、福田首相は衆院解散を行わないままに同年9月に退陣した。2021年4月には、自民党が補選で全敗し、菅首相は同年9月の総裁選への出馬を断念した。 今回の補選全敗を受け、岸田首相はその責任を問われることになり、衆院解散の時期を判断する戦略を練り直すことになるだろう。岸田首相にとっては9月の自民党総裁選で再選を果たすことが再優先課題となる。その前に自民党内で支持率が低い岸田首相を交代させることで党の浮揚を目指す場合には、いわゆる「岸田おろし」の動きが強まる。 しかし、9月の自民党総裁選までに「岸田おろし」の傾向が強まる場合には、岸田首相は衆院解散に踏み切ることを示唆することで、そうした動きをけん制することができるだろう。党の支持率が比較的高く、岸田首相の支持率のみが低い場合には、自民党の衆議院議員らは、首相の専管事項である衆院解散を恐れずに「岸田おろし」に動く。しかし、現在は自民党全体の支持率も大きく低下しており、選挙となれば自民党候補には厳しい戦いとなることは必至だ。そのため、解散総選挙を恐れて9月の総裁選まで「岸田おろし」の動きは強まらないのではないか。岸田首相に代わる有力候補がいないことも、岸田政権の延命を当面助けることになるだろう。 NHKの4月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は23%で、内閣発足以降で最も低かった昨年12月の支持率と並んだ。他方、4月の自民党の政党支持率は28.4%だ。自民党の政権復帰後で自民党の政党支持率が30%を下回ったのはいずれも岸田内閣で、昨年12月の29.5%、3月の28.6%に続き3度目となる。