日銀は状況許せば6月にも利上げ、現状「緩和し過ぎ」-関根元局長
(ブルームバーグ): 元日本銀行調査統計局長の関根敏隆一橋大学国際・公共政策大学院教授は、日本の金融緩和度合いの大きさを踏まえれば、日銀が政策調整を進めることは自然であり、状況が許せば6月の金融政策決定会合での追加利上げもあり得るとの見解を示した。
関根氏は15日のインタビューで、インフレ率や需給ギャップなどから適切な政策金利水準を割り出すテイラー・ルールとのかい離や実質金利の大幅なマイナスを考えれば、日本は「金融緩和のし過ぎだ」と主張。日銀の金融政策運営は内外経済や物価の基調が大きな変調を来していないことを前提に、「機会が許せば少しずつ金利を引き上げていくオポチュニスティック(機会主義的)なアプローチになる」とみる。
ターミナルレート(利上げの最終到達点)は、現在の市場の想定よりも「もう少し高いところにあってもおかしくない」と分析し、現段階で「0.5%や0.75%が壁とか決める必要もないし、限界は誰にも分からない」という。利上げのペースやタイミングは何も決まっていないだろうと述べ、状況が許せば「年内に3回やっても全く構わない」し、次回は「6月でもいい」と語った。
植田和男総裁も9日の参院財政金融委員会で、実質金利は「中立水準をかなり下回っており、緩和的な状況にあることは確かだ」と同様の見解を示している。ブルームバーグが4月会合前に実施したエコノミスト調査では、ターミナルレートの中央値は0.75%となっており、関根氏の発言はペースが速まることを含めて市場の想定を上回る利上げが行われる可能性を指摘したものだ。
関根氏は1987年に東大経済学部を卒業し、日銀に入行。黒田東彦前総裁の下で2015年から4年間、日銀のチーフエコノミストに位置付けられる調査統計局長を務めた。19年に金融研究所長に就任し、20年から現職。
関根氏によると、景気や物価に中立的な実質金利水準である自然利子率は「ならしてみればゼロ%程度」。4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)における2016年度の消費者物価見通しが2%程度であることを踏まえれば、名目の中立金利は2%程度になる。自然利子率の推計自体に幅はあるものの、中立金利が現在の政策金利水準の無担保コール翌日物金利0-0.1%程度を大きく上回るのは明らかだ。