その「頭痛」が危険ではない根拠はどこに? 頭痛の検査の内容と重要性を解説
頭痛の検査はどのように行われるのか?
編集部: 頭痛の検査では、どのようなことを行うのですか? 宮崎先生: 問診のほか、CT検査とMRI検査を行います。症状に応じて、どちらの検査を行うか選択します。 編集部: それぞれの検査ではどのようなことがわかるのですか? 宮崎先生: まずCT検査では頭部にX線を照射して、頭部を輪切りにしたような断面画像が得られます。これにより、脳挫傷、脳出血、頭蓋内出血などの疾患を確認できます。またCT検査では骨の状態をよく見ることができるので、打撲など外傷の検査にも有用です。 編集部: MRI検査ではどんなことがわかるのですか? 宮崎先生: 強力な磁力と電磁波で頭部の断層画像を撮影する検査です。MRI検査では血管などもきれいに映ります。そのため、脳動脈瘤、頭蓋内主幹動脈の狭窄や閉塞、脳梗塞、脳腫瘍、くも膜下出血、髄膜炎などの早期発見に役立ちます。 編集部: 血管も映し出すことができるのですね。 宮崎先生: はい。MRI検査を行うことで、頭や首の血管に詰まりや狭くなっている部分がないかなどの確認ができます。 それにより、くも膜下出血の原因となる未破裂脳動脈瘤や動静脈奇形、脳卒中の原因となる無症候性脳主幹動脈閉塞・狭窄の有無などなどを調べることができます。 編集部: 一度の検査でいろいろなことがわかるのですね。 宮崎先生: MRI検査は二次性頭痛の鑑別のみではなく、一次性頭痛の治療においても重要です。たとえば片頭痛の治療薬のトリプタン製剤という薬を処方する前には必ず脳梗塞や脳血管狭窄の有無を調べる必要があります。その際にもMRI検査が有効です。
検査方法によるメリットとデメリット
編集部: 頭痛がひどい場合、どの検査を受けたら良いのでしょうか? 宮崎先生: 通常はCT検査とMRI検査の比較になります。ただし、CT検査とMRI検査ではそれぞれメリットとデメリットがあるので、考慮しながら選択する必要があります。 編集部: CT検査のメリットはなんですか? 宮崎先生: 撮影時間が3分程度と短いため、頭部の外傷や脳出血、くも膜下出血など緊急性の高い疾患の鑑別に有効ということです。また骨の状態も得られるため、骨折の有無もわかります。 編集部: デメリットはありますか? 宮崎先生: 一番は、放射線被曝があるということです。そのため、子どもには使いづらいというデメリットがあります。また、造影剤を使わないと血管を映し出すことができないので、血管の狭窄や詰まりなどは極めて見つけづらいというのもデメリットです。 編集部: 一方、MRI検査のメリットはなんですか? 宮崎先生: CT検査と違って被曝の心配が一切なく、低侵襲で疾患を早期発見することができます。また血管を映し出すのも得意なので、くも膜下出血の原因となる危険性の高い脳動脈瘤などの発見に有効です。 それからCT検査は1種類の画像しか取得できないのに比べ、MRI検査は一度でさまざまな画像を取得することが可能です。 編集部: さまざまな画像を取得できる、とはどういうことですか? 宮崎先生: MRI検査では、たとえば「1か月以内の脳梗塞だけ調べたい」「脳の形を細かく調べたい」「神経だけを映したい」など、多種類の画像を一度で取得することができるのです。 そのため緊急性はそれほど高くないけれど、頭痛の原因をはっきりとさせたいというときには、MRI検査が有効です。 編集部: 逆にMRI検査のデメリットはありますか? 宮崎先生: 一般的に撮影時間30分程度とCT検査に比べて長いので、緊急性の高い疾患にはあまり有効ではないというデメリットがあります。ただし、当院のように10分で綺麗に撮影することができるところもあるので、必ずしも「MRI検査は撮影時間が長い」とは言えません。 編集部: そのほか、MRI検査のデメリットはありますか? 宮崎先生: ペースメーカーなど、金属を体内に埋め込んでいる人は検査ができない場合があります。ただし、近年はチタンであれば検査が可能な場合もあるので、詳しくは医師に確認が必要です。 またタトゥーを入れている人もMRI検査をする前には確認が必要です。検査はできますがタトゥーが入っている部位が熱くなることがあります。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 宮崎先生: 現在では「頭痛は我慢するのが当たり前」となっている人が多く、頭痛を理由に受診する人は少ないのが現状です。しかし、「痛みがあること自体が、異常である」という認識をしていただきたいと思います。 頭痛で悩まれている方は一度頭痛外来を受診し怖い疾患を除外し、適切な治療を受けて頂くことが大切です。最近は片頭痛に対する治療薬や予防薬も非常に進化していますから、痛みがない快適な生活を、ぜひ、手に入れていただきたいと思います。