夫婦で家事分担、かえって忙しくなるナゾ 増え続ける「ステルス負担」の正体
気付かれにくい「ステルス負担」
夫だけではありません。妻の方はもっと前から工数が上乗せされてきていました。「2024年版 男女共同参画白書」によると、共働き世帯と専業主婦世帯の数は1990年ごろを境に逆転し、30年超の間に共働き世帯が専業主婦世帯のほぼ3倍に増えています。いまや大半の家庭で、家庭のことにプラスして、パートなどの仕事にかかる工数が妻に上乗せされているということです。 以前書いた「『もっと働け』と強いる“女性活躍推進”のむなしさ 男女の格差なぜなくならない?」でも解説しましたが、共働き世帯の総工数は専業主婦世帯における家庭内の総工数と比較して、仕事工数が上乗せされた分多くなります。もちろん、家庭によって差はありますが、妻が家庭の仕事をワンオペで担当し、かつ共働きのモデルケースを数字で表すと、以下のように生活にかかる総工数は200から250へと増えます。 妻がワンオペしている家庭では、パート勤務などと掛け持ちする形で増えた工数を妻がほとんど負ってきました。そんなワンオペ状態から脱却し、夫とシェアしようとしつつあるのが現在の流れです。ただ、そうすれば妻の工数は緩和されるものの、夫の工数が増えるので夫婦の総工数は250のまま変わらず、専業主婦世帯のころの200に戻るわけではありません。 夫婦共働き化が進む中で上乗せされたはずの工数50の状態がいつの間にか当たり前となると、気付きにくい「ステルス負担」として定着していきます。 一方で、物価は年々上昇しており、生活するためには収入を維持していかなければなりません。「2023年 国民生活基礎調査の概況」を確認すると、児童がいる世帯の年収は2013年から2022年の間に696万円から812万円へと116万円も増えています。 切りよく800万円だとして、夫一人でこれだけの収入が得られれば、妻が家庭に専念して生活ができます。妻が働き、夫が専業主夫というケースもありますが、いずれにせよ専業主婦・主夫世帯であれば、生活にかかる工数は仕事専業100と家庭専業100を合わせて200に収まります。 しかし、それが難しい場合は夫婦共働きで800万円の収入を得る必要が出てきます。扶養枠内で働く妻が夫の半分程度の工数、勤務時間に当てはめるなら1日4時間程度パート勤務して100万円の収入を得た場合、夫の収入が700万円なら合計800万円に到達します。 とはいえ、この場合の総工数は妻側に仕事工数50が上乗せされるので250です。また、700万円の収入を得るのも簡単ではありません。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると2023年に700万円超の人は15.9%。平均給与は460万円です。 仮に夫の収入が460万円であれば、妻が340万円の収入を得ないと800万円になりません。340万円の年収は、時給1500円で週5日8時間働いたとしても届かない数字です。 それならば、夫婦が共に正社員として働いて400万円ずつ収入を得て、家のことも完全に半々にしたらどうでしょうか。すると、仕事工数が夫婦ともに100となるため、下図のように総工数が300に増えてしまいます。つまり、ステルス負担が50から100に膨れ上がるということです。