“脱・厚底シューズ”をしたら練習に変化 目標は箱根5位以内、敢えて進めた「吉田抜き」が転機に
「箱根駅伝監督、令和の指導論」 中央学院大・川崎勇二監督/第4回
第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が1月2、3日に行われる。「THE ANSWER」は令和を迎えた正月の風物詩を戦う各校の指導者に注目。今回、箱根予選会を5位で突破した中央学院大は、5位以内を目標して準備を進めている。国学院大、駒澤大、青学大の3強、さらにシード権を狙う大学に対して、どのように戦っていくのだろうか。(全4回の第4回、聞き手=佐藤 俊) 【画像】今年の箱根駅伝で話題になった「山の名探偵」の写真 ◇ ◇ ◇ ――今シーズンは、どのようにチーム作りを進めていったのでしょうか。 「これは、もう昨季から言い続けているのですが、吉田(礼志・4年)抜きのチーム作りをしようと。昨季の全日本大学駅伝の予選会で吉田がフラフラになって連続の出場記録が途絶えたんです。その時、私が『吉田抜き』を言う前に当時のキャプテンの飯塚(達也)が『監督がいつも言っているように吉田に頼っているからこうなるんだ。これからは吉田抜きで考えよう』と言ってくれたので、そこからその方向性でチーム作りをして、今季も継続してきました。でも、今季の全日本予選会を突破できなかった時、吉田の方から『夏は実業団の合宿に行かず、チームを引っ張っていきます』と言ってきたんです」 ――監督は、その判断を受け入れたのですか。 「いえ、吉田には『実業団の合宿に行きなさい』と伝えました。彼は死ぬ気で頑張って東京の世界陸上やロス五輪を目指しているので、『実業団の合宿に行って、さらに自分を磨いて強くなって戻ってくればいい。自分を殺してまでチームを優先しなくてもいい。自分の今後の人生を大事にしろ。お前抜きだって今のチームはやっていけるから大丈夫だ』と話をしました」 ――選手からは目標の提案などはあったのでしょうか。 「学生からは、目標を全日本大学駅伝予選会3位通過、箱根駅伝予選会はトップ通過、本戦5位以内に決めたと言ってきたんです。これを聞いた時、『本気で考えているのか』と聞き直しました。本気ならこれに沿った練習をするのでレベルが上がり、怪我のリスクも高くなるという話をして、差し戻したんです。でも、『覚悟を持ってやります』というのでスタートしたのですが、現実には選手が壊れて全日本予選会は主力の半分が使えなくなりました。秋の箱根の予選会前も『トップ通過を目指すなら同じレベルの練習をしないといけないので、同じことを繰り返さずにできるか』と彼らに問うたんです。学生たちは『やる』と言い、予選会を5位で通過した。よく頑張ってここまで来たと思います」 夏合宿では、ジョグをしっかりこなすようになり、吉田不在の中、3年生で副将の近田陽路を軸に声が出るようになった。近田が練習を引っ張り、副将として行動で示してくれたことでチームがどんどん変わっていった。 ――夏合宿を終えての手応えは、いかがだったのですか。 「非常に良かったと思います。吉田が帰ってきた時、『こんなにチームが成長しているとは思わなかった』と驚いていました。吉田がいなかったことで個々の選手の成長を促すことが出来たかなと思います」 ――練習等に新たに取り組んだこと、取り入れたことがあったのですか? 「練習を変えたり、新しいことに取り組むことはなかったです。ただ、走る量は増えました。それから夏合宿の前からスピード練習や実戦的な練習以外は、厚底シューズを履くのをやめました。それで距離走をさせていると、選手は『足にきました』と言っていましたが、『それが普通だから。これまでいかに足を使わずに走ったのか、分かればいい』という話をしました。それ以降、いつも厚底を履きたいという子はいなかったですね」