セブン-イレブンはなぜ、全国展開や大都市圏への出店を急がなかったのか?
首都圏に続く消費市場のある大阪府や愛知県への進出も、けっして早いタイミングではありません。同社は1981年に東証一部(現在の東証プライム)への上場を果たしていますが、それからずいぶん経ってからのことです。1991年サウスランド社の経営破綻により、同社がサウスランド社の株式を取得し米国セブン-イレブンの経営に参画することになるわけですが、その時点では20都道府県で店舗展開していたものの、大阪府や愛知県には未進出でした。そのことから国内事業での拡大余地がまだ十分にあると考え、経営権の取得に動いたともいわれています。 結局のところ、大阪府への進出は1995年。ローソン1号店(豊中市)の出店から21年遅れての出店になりました。また愛知県への出店は店舗数1万店に近づきつつある2002年のことでした。現在、大阪府での出店は1276店で東京都、神奈川県に次ぐ店舗数、愛知県も1061店と、首都圏の一都三県および大阪府に次ぐ規模になっています。 単に出店数だけを考えれば、市場の大きなところを中心に全国に幅広く出店をしたほうが、短期的には早く規模を拡大することが可能です。しかし、長期的に見ると、基礎体力という点で大きな課題が生まれてきます。そのことを裏付けていると考えられるのが、全店平均日販の差です。 三大チェーンのなかでいち早く全国展開を果たしたローソンの全店平均日販は52万2000円ですが、それに対しセブン-イレブンは67万円と大きな開きになっています(ファミリーマートは53万4000円)。 最後に、セブン-イレブンがドミナント戦略、同社のいう「高密度集中出店方式」をとってきた狙いはどこにあったのか、まとめてみます。 まず、一定の地域内で「セブン-イレブン」が顧客の目に触れる機会を増やし、店名とともに“コンビニエンスストア”という業態をメジャーなものとして認知させることがあげられます。 次に商品やサービスなどの販売促進に必要な広告宣伝を効率よく実施できます。そして、店舗経営相談員による日々の店舗サポート活動の効率化にもつながっていきます。 さらには、おにぎり、弁当などセブン-イレブンのオリジナル商品については、高密度集中出店方式を背景に、独自の専用工場の設置や、鮮度よく品質の高いものを提供するための販売時間帯に合わせた計画的な配送を実現し物流効率を最適化しています。
角井 亮一