頼んでもいないのに「点検します」「危ないですよ」高齢者を狙う罠。住宅街をゆっくり走る“不審な車”が全国各地で出現
コツコツ働いて、贅沢はできないまでも生きていくために蓄えた老後資金を狙う輩で世の中は溢れている。これが高齢化社会の現実なのか。身近に潜む最新手口に迫る! ⇒【写真】時間を潰したのか、大量のタバコの吸い殻も落ちていた
不穏な空気に怯える高齢の住人たち
関東近郊にある、東京から2時間ほどの住宅街。建売住宅が等間隔に並ぶ「ありふれた光景」だが、住人たちは不穏な空気に怯えていた。 「ここ数年、町内をゆっくり走る車が増えていて自治会で注意喚起がなされてます。作業着姿の男がスマホでパシャパシャ写真を撮っていったり、スーツ姿の2人組も頻繁に見かけるようになった。この辺は団塊世代より上の老人ばっかりだから、見知らぬ顔が来ると目立つ。何か悪さ、してるんだろうかねえ……」(近隣に住む男性) こうした光景は今、日本中に広がっている。消費者庁が’23年に発表した統計によると、「点検商法」と呼ばれるスキームの相談件数がこの5年で3倍に増加。
「点検商法」と呼ばれるやり口とは?
「お宅の家の瓦、落ちてきそう。危ないですよ」などと言葉巧みに話しかけ、後に法外な料金を請求するのがお決まりだ。消費者問題に詳しい弁護士の嵩原安三郎氏の解説。 「高齢者、中でも一人で暮らす老人を標的にした悪徳商法が跋扈しており、深刻な社会問題となっています。訪問型はリフォーム詐欺がよく知られてますが、家に押しかけて貴金属を買い叩く押し買いなど手口はさまざま。警察官になりすましてキャッシュカードを騙し取る事例まであります。 電話主体の振り込め詐欺が周知され、以前のように収益を上げられなくなり訪問型に切り替えてる印象もある。資産状況を調べた上で自宅に押し入るアポ電強盗はその最終手口と言えるでしょう」
注意すべきは犯罪組織や半グレだけでない
恐ろしいことに、老後資金を狙っているのは犯罪組織や半グレだけでない。 介護施設ではスタッフが入居者の銀行口座から勝手に現金を引き出す事件が起きていたり、遺言書を偽造する弁護士がいたり……モラルなき凶行がこの世には溢れているのだ。
ジャーナリストが明かす犯罪の手口
ジャーナリストの根本直樹氏が語る。 「退職金を受け取り、子育てやローンも一服ついた60代から上の世代が今の日本ではもっとも金融資産を持っているのは自明。 アポ電強盗の被害者たちが同じ証券会社の口座を持っていたのは有名な話ですし、最近ではリフォーム会社や新聞配達員が“足で稼いだ”狙いやすい家庭のリストを作成し、売っているとも聞きます。 遺言の相談窓口をつくってそこに来た客を食うなんて手口も。“持たざる者”がなりふり構わなくなっている、そんな気配を濃く感じます」 人生の終盤に訪れる、資産を狙われるという恐怖――この現実を我々は知っていなければいけない。