大統領警護処に亀裂か…窮地の尹大統領「逮捕の代わりに拘束令状」主張するわけは
「事前拘束令状を口にする人が内乱犯だ」 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の2回目の逮捕状執行が差し迫った中、尹大統領側があからさまに時間稼ぎに乗り出した。捜査機関への出頭はもちろん、裁判所が発付した逮捕状の執行まで拒否した尹大統領側が、突然「在宅起訴するか、事前拘束令状を請求せよ」というつじつまの合わない主張をしている。 法曹界では、尹大統領の「自分の要求に従えば裁判に応じる」という居直りの態度が、2回目の逮捕状執行を免れようとする「生存本能」の結果とみている。 大統領関連事件の捜査経験がある検察出身の弁護士は9日、「法的責任を負うと言っておいて、官邸の扉を閉めて居座る尹大統領の言葉は全く信頼できない。逮捕状は受け入れられないが、事前拘束令状の請求には応じるというのは、極右勢力などが結集する時間を稼ごうとする詐欺的形態」だと語った。 尹大統領は12・3非常戒厳宣布後に発表した国民向け談話で、「法的、政治的責任問題を回避しない」としたが、嘘であることが明らかになった。検察と高位公職者犯罪捜査処の出頭要請を全て拒否し、裁判所が発付した逮捕状の執行も拒否した状況だ。むしろ極右勢力に「自分を守れ」というメッセージを送り続けている。国政混乱の状況を持続させることで、極右勢力だけでなく、政局不安の長期化を懸念する一部保守層を再び引き入れようとしているのだ。 2回目の逮捕状が発付されてから3日目になったが、令状執行の時期はまだ明らかになっていない。その間、大統領官邸は有刺鉄線と車壁などで要塞化している。1回目の執行を試みた時とは違って、2回目の執行は奇襲的に行われる可能性が高い。 ただし、捜査能力と意志の両方が疑われる公捜処の優柔不断な行動からして、2回目の逮捕状の執行が遅れるのは警戒すべきという声があがっている。オ・ドンウン公捜処長を推薦した与党「国民の力」側の人物などを通じて、「逮捕ではなく事前拘束令状の請求」というメッセージを注入し続ける可能性があるということだ。 「朝鮮日報」は社説を通じて「尹大統領の逮捕に執着せず、拘束令状を請求するか、または在宅起訴するのが望ましい」と主張した。「拘束令状が発付されても従うと言っているため、この約束を守る意志さえ確実ならば、法を守るという提案と見ることができる」という我田引水の解釈まで付け加えた。 検察出身の弁護士は「嘘をつき態度をコロコロ変える尹大統領の約束履行の意志を取り上げ事前拘束令状の請求をささやく人たちがいるなら、それは内乱罪の捜査を妨害しようとする内乱共犯とみなすべきだ」と話した。 与党「国民の力」のチョ・ギョンテ議員も同日朝、「SBS」の番組「キム・テヒョンの政治ショー」に出演し、「検察総長出身の大統領側の弁護人とは思えない発言だ。犯罪者が自分の気に入った裁判所を選び、逮捕状には応じず拘束令状には応じると主張するなんて、何を言っているのか到底理解できない」と述べた。 法曹人である尹大統領が刑事訴訟の手続きと関連してとんでもない要求をした背景については、自分を守る大統領警護処の内部分裂があるためだという解釈もある。警護処に派遣された軍と警察の人員が「尹錫悦死守隊」から事実上離脱したことで、2回目の逮捕状執行の阻止は警護処職員だけが動員される可能性が高い。 警察は2回目の逮捕状の執行を阻止する警護処の職員は全員現行犯逮捕する方針だ。相当数は特殊公務執行妨害の容疑で起訴される可能性が高い。警察業務に詳しい法曹界関係者は、「警護処を廃止し、警察に大統領警護業務を移管せよという声が高まる中、警察が積極的に警護処職員を起訴意見で送致する可能性がある。政治家であるパク・チョンジュン(警護処長)など警護処の指揮部と一般職員の間に乖離が大きいだろう」と語った。 野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員は同日、「CBS」のラジオ番組「キム・ヒョンジョンのニュースショー」で、「(警護処の)首脳部はキム・ヨンヒョン(前国防長官)や(尹大統領夫人の)キム・ゴンヒによって抜擢されたため、集団的に表現したり話したりするのは難しいが、特に若い世代の警護官たちがかなり動揺していると聞いた。水面下では(不満世論が)沸騰している。一部の首脳部に対して、今おこなっているこの妄言と行動に対して非常に不満が多いということ」だと述べた。 大統領の私兵に転落した警護処の改革を求める声も高まっている。国会には大統領直属機関である警護処を廃止し、警察庁警護局などに移管する内容の大統領警護法改正案が4件発議されている。警護処の職員が起訴され有罪が確定すれば辞めなければならない。警護処が(警察に)移管された場合、警護処職員を警察庁所属として受け入れなければならない警察としては、できるだけその数を減らそうとする可能性が高い。 警護処の職員としては、パク・チョンジュン処長、キム・ソンフン警護処次長、イ・グァンウ警護本部長らの違法な指示に従うことに負担を感じざるを得ない状況だ。 尹大統領側とチェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官、「朝鮮日報」などが、警護処の物理的抵抗を公共機関の正当な業務であるかのようにごまかしているという批判も大きい。公捜処と警察の正当な公務執行を妨害する犯罪行為を公共機関間の業務衝突のフレームに変えようとしているということだ。 キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )