54歳おひとりさま・きんの「母のために都内駅近新築マンションを手放し、職場からは往復3時間に。それでも築50年の団地を選択して正解だった」
2021年度の生命保険文化センターの調査によると、世帯主が65歳以降に必要と考える「夫婦の老後生活資金」は、年金を除いて月額約16万円だそうです。まもなく年金を受け取る方も、これからの方も、老後に向けてお金の不安は募りますよね。そんな老後を見据え始める50代直前、母の介護のために新築マンションから築50年の団地に引っ越したのがきんのさん。そのきんのさんいわく「母のSOSに応えられるのは私だけ」だそうで――。 【写真】きんのさんお手製「リノベーションノート」。チラシや雑誌から、いいなと思った写真を切り抜いてはノートに貼り付けてイメージを固めた * * * * * * * ◆都会の快適なマンション暮らしと、老いてゆく母。選んだのは…… 私は幼いころ両親が離婚し、父と祖母に育てられました。母と生活した時間は短く、この境遇を恨んだこともあります。ほかの兄弟たちも少なからず同じ気持ちだったでしょう。 就職で上京した際に同じく東京にいた母と再会し、交流が増えました。母はお茶目で無邪気な人。色々あっても憎めないのはやはり母親だから。 ケンカもするけど、すぐ仲直りできる不思議な関係です。母のSOSに応えられるのは私だけ、それだけははっきりしていました。 確かに、最近の母の異変には気づいていました。足元はおぼつかないし、同じ話を何度もしたり、同じものを大量に買ってきたりすることも。母の老後を見るのは私しかいない、でも……。 母を選べば、思い描いていた私の夢は捨てることになります。着物で美術館、快適でおしゃれな住まい、気ままなシングルライフ、全て諦めなくてはならなくなる。しかも団地は職場から往復3時間の距離にありました。
◆母を、そして団地を 母を取るか、自分の夢を取るか――。 難しい問題ですが、悩んでいる時間はありませんでした。問題が起きたとき、いつもやることがあります。それはノートにメリットとデメリットを書き出すこと。 すると、団地と都内のマンション、どちらもメリット、デメリットは同じぐらいあることが見えてきました。 それなら自分が譲れないこと、失いたくないことはなんだろう。ここで母を見捨てたら、私は一生後悔する――。 私は母を、そして団地を選びました。
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