京の伝統“始末の心”を体現する「ザ・リッツ・カールトン京都」の料理
「ここから車で30分も走れば、生命力にあふれたみずみずしい野菜を育てている農家に行けます。そうして日々、生産者さんとコミュニケーションをとり、一緒に料理を生み出しています。京料理の歴史とともに受け継がれてきた朝採れ京野菜はもちろん、命を大切に扱う生産者さんが育てる牛、豚や鶏、獲った直後に船上で適切、丁寧に処理された魚介類。どれもが、このホテルの料理にとってなくてはならない大切なものです。食材は命そのもの。命をムダなくつかい切ってこその料理だと考えています」(井上シェフ)
フードロスをほぼゼロにした、地産地消の朝食
同ホテルの朝食は、地産地消を重視。たとえば洋食では、宇治市産の「ひらがいたまごWABISUKE」をつかった卵料理、神戸市・弓削牧場の、飼料にまでこだわった牛から生まれた牛乳やヨーグルトを提供している。
「われわれの一番のミッションはサステナブル。できる限り地元の食材をつかうことを重視したメニューづくりをしています。また、当ホテルの朝食はすべてセットメニューでビュッフェスタイルではありません。ビュッフェはオペレーションの負荷が少ないため多くのホテルが採用していますが、多くの食料廃棄を生み出す原因にもなっています。セットメニューにすることによって、食材のロスはほとんどなくなりました。その分、こだわり抜いたクオリティの高い料理を提供できていると自負しております」(副総料理長の小松良平さん)
サステナブルを体現しているのは、たとえば朝食セットメニューの前菜。愛知県・渥美半島の地下海水を汲み上げて養殖されたサーモンをつかっている。前出の小松副総料理長が解説する。 「排泄物やエサの食べ残しなども濾過され、薬品をいっさい使用しないキレイな水で育てられた、環境負担が少ないサステナブルサーモンです。これも近郊から食材を仕入れることで、フードマイレージ削減につながっています」 その他、ケチャップやマスタードなどの調味料も純国産で揃える準備を進めているという。館内すべて、サステナブルにつながるアイデアに満ちたホテル、それがザ・リッツ・カールトン京都なのだ。 text:鈴木博美、photo:佐藤良一