ダウニーJrやエマ・ストーンは「レイシスト」なのか? アカデミー賞「アジア人差別騒動」“先入観”に目を曇らされずに考える
ハリウッドに根深く残るマイノリティ差別
ハリウッド映画はながらく人種差別の問題を積極的に取り上げてきたが、現実のハリウッドには白人優位主義が厳然として存在し、根強く差別の構造が残っていることは常々批判されてきた。 100年近いアカデミー賞の歴史の中でも、非白人系の候補者や受賞者は極端に少なく、演技部門でノミネートされた割合はひと桁台に過ぎない。2015年には演技部門のノミネートがすべて白人だったことに抗議する「#OscarsSoWhite(アカデミー賞は白人ばかり)」運動が巻き起こったが、翌16年も候補者は白人しか選ばれず非難が殺到。アカデミー協会はマイノリティや女性の会員を大量に増やすなど、多様性をアピールする方針に舵(かじ)を切るキッカケにもなった。 2018年にはアジア系キャストによるラブコメディ『クレイジー・リッチ!』が世界的に大ヒットし、マイノリティの中でもアジア系にようやく光が当たり始める。2020年のアカデミー賞では韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』が作品賞、監督賞など4部門を受賞。翌21年は『ノマドランド』のクロエ・ジャオが中国系で初めて監督賞に輝き、韓国のベテラン女優ユン・ヨジョンが『ミナリ』で助演女優賞を受賞するなどアジア系がトレンド化していく(また同年は演技賞候補20名のうち9人をマイノリティ系が占めた)。 さらに2022年には日本映画『ドライブ・マイ・カー』に国際長編映画賞が贈られただけでなく、作品賞と監督賞にもノミネート。そして極めつけとなったのが、昨年の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の大量受賞だった。ミシェル・ヨーはアジア系として初めて主演女優賞を獲得し、ガラスの天井を打ち破った歴史的な快挙として記憶されることになったのだ。 今年のアカデミー賞授賞式で白人系スターの振る舞いや態度が問題視された背景には、ハリウッドのアジア系が存在感を示したことで、業界内のさらなる変革を期待するだけでなく、現実にあるアジア人差別に立ち向かう機運が盛り上がっていたことも忘れてはならない。