大学自治を脅かし、学問の自由を奪いかねない「国立大学法人法改正案」の問題点と法案可決までの異常なスピード感
「国立大学法人法改正案」の問題点#1
2023年11月20日、一部の大規模な国立大学に運営方針の決定などを行う合議体の設置を義務づける「国立大学法人法改正案」が衆議院を通過した。だが、この法案は「稼げる大学」の過熱や文部科学大臣の人事介入を招き、学問の多様性喪失、学生の教育環境悪化を加速させる恐れがある。その理由を解説する。(前後編の前編) 【図を見る】「国立大学法人法改正案」で大学内の権限はどう変わるのか
日本学術会議任命拒否を彷彿とさせる制度設計に突如変更
国民の反対を無視して、自公政権が数の力で問題法案を強行採決することが常態化している。 例えば、今年6月に強行採決された入管法改正案では国会前で数千人規模の抗議デモが複数回行われた。テレビや新聞でもそれなりに報道されたため、法案の問題点を認識している読者は少なくないだろう。しかし、これに匹敵する悪法が今月、衆議院で強行採決された。 その法案の名前は、「国立大学法人法改正案」(「国大法」と表記する場合あり)。 この法案は、国立大学における「学問の多様性喪失」や「学生の教育環境悪化」を招き、将来的には公私立大学にも同様の悪影響が波及する恐れがある。つまり、これから日本の大学に進学予定のすべての学生が甚大な不利益を被りうる。 国大法改正案最大の懸念事項は、新たに設置が義務付けられる「合議体」(「運営方針会議」と表記する場合あり)と呼ばれる意思決定の仕組みだ。委員3名以上及び学長で構成される合議体は以下の通り、非常に強い権限を与えられる。 <新設される権限> ・学長に対して、法人運営を監督 ・学長選考・監察会議に対して、「学長選考に関する意見」や「学長が解任事由に該当する場合の報告」を実施 <役員会から移譲される権限> ・「中期目標への意見、中期計画の作成」「予算と決算の作成」の意思決定 合議体を構成する委員の半数以上は学外者が適当とされている。その理由は、もともと合議体は国際卓越研究大学(認定校を大学ファンドで助成する仕組み)のみで必置とされたものだからである。学外から支援を受けるのだから、意思決定機関にも学外の者を入れるべきという考え方だ。 ところが、今年9月7日に内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(通称「CSTI」)で文科省が説明した資料「国際卓越研究大学の認定に向けたガバナンス改革と国立大学法人の規制改革の具体の方向性について」は従来の議論から完全に逸脱していたため、関係者は驚愕した。その逸脱ぶりを、「合議体に関する従来案と改正案の変化」と「懸念点」に着目して整理すると、次のようになる。
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