大学自治を脅かし、学問の自由を奪いかねない「国立大学法人法改正案」の問題点と法案可決までの異常なスピード感
合議体が大学自治の崩壊を加速させる理由
まず合議体の設置対象は、従来案では「国際卓越研究大学のみ」(今年9月に認定候補に残ったのは東北大学1校)だったが、改正案では「一定水準の規模」と政府が見なしたすべての大学法人へと一気に拡大。 「一定水準の規模」の目安として改正案には「理事が7人以上」等の記載がある一方、9月7日のCSTI議事録などを確認すると、当面は以下5法人が対象と見なされている。 東北大学、東京大学、東海国立大学機構(名古屋大学・岐阜大学)、京都大学、大阪大学 ところが、理事が7人以上いる国立大学は全11法人のため、残りの以下6法人はなぜか対象から漏れたことを意味する。 北海道大学:7人、筑波大学:8人、神戸大学:8人、岡山大学:7人、広島大学:7人、九州大学:8人 *上記に加えて、2024年度に「東京科学大学(仮称)」に統合予定の東京工業大学(4人)と東京医科歯科大学(5人)も統合後は理事が7人以上になる可能性あり 11法人のうち今回の5法人が選ばれた理由は不明。学生数などで比較すれば東北大学と規模が同等以上の3法人(北海道大学、九州大学、筑波大学)が外された事実が示す通り、政府のさじ加減で合議体の設置対象が一方的に決められることは大きな問題だ。 これは可能性としては、将来的に設置対象の国立大学全86校への拡大もあり得ることを意味する。また、今回の改正案では言及されていないが、将来的にこうした動きが公立大学・私立大学に波及する恐れもあるだろう。 さらに、強大な権限を与えられる合議体の委員の任命方法も突如変更。従来案では文科大臣は「法人の申出」に基づき委員を任命するだけの立場だったが、改正案では文科大臣の「承認」が委員任命に必要となった。 つまり、文科大臣が納得しない人物の任命拒否が可能になる。これはいわば、2020年に大問題となった日本学術会議の任命拒否とまったく同じ構図となり、政権に不都合な発言や研究をした人物は任命拒否の恐れが生じる。これこそがこの改正案が第二の日本学術会議問題になると懸念される理由だ。
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