PCスピーカーを超えたサウンド。クリエイティブの球状スピーカー「Pebble Nova」1カ月使ってみた
クリエイティブメディアが2024年12月中旬に発売した同軸ドライバー採用のアクティブスピーカー「Pebble Nova」を“奇跡の9連休”だった年末年始休みも含めて約1か月間使ってみた。「Pebbleと言えばコスパの良いPCスピーカーの定番」というイメージだったが、“プレミアムモデル”を謳うPebble Novaは、音楽もゲームも映像も、あらゆるコンテンツをハイレベルに楽しめるスピーカーに仕上がっていた。 【画像】左がPebble Nova、右がPebble X 今回は、そんなPebble Novaが登場するまで、シリーズの最上位モデルだった「Pebble X」も合わせて借りたので、そのサウンドの違いなども紹介する。 ■ Pebbleシリーズ、その“プレミアムモデル”とは クリエイティブのPebbleシリーズといえば、コロンとした丸い形状が特徴的なPCスピーカー。直販価格1,980円でアナログ接続対応の「Pebble」から、USBオーディオ、Bluetoothにも対応し、RGBライトも備えた直販14,800円の「Pebble X」、コンパクトなサブウーファーもセットになった「Pebble X PLUS」など、豊富なラインナップで展開されている。 そんなPebbleシリーズに“プレミアムなデスクトップステレオスピーカー”として仲間入りしたのが、このPebble Nova。シリーズの特徴である球体状デザインとドライバーを45度上向きに搭載する設計は継承しつつ、新たに3インチドライバーと1インチツイーターを同軸上に配置した同軸ドライバーを採用。背面には大型パッシブラジエーターも備え、「高音から低音までを50W RMS/ピーク出力100Wのパワフルなオーディオで再生する」とする。直販価格は41,800円。 入力は3.5mmステレオミニのアナログ接続に加え、USBオーディオ、Bluetoothにも対応。さらにマイク入力や3.5mmステレオミニのヘッドフォン出力も備えており、スマートフォンやPC、タブレット、アナログプレーヤーまで、さまざまなオーディオ機器と組み合わせて使用できる。なおヘッドフォン出力やマイク入力機能はファームウェアアップデートを通じて利用可能になる予定。 再生周波数帯域は55Hz~20kHzで、BluetoothコーデックはSBCをサポートする。ピーク出力100Wと出力が高いこともあり、USBバスパワーで駆動させることはできないが、製品には65WのUSB PD電源アダプターが付属しているので、これをコンセントに繋いで使用する。そのほか付属品は左右スピーカーをつなぐスピーカーケーブル(約1.8m)、USB-Cケーブル(約1.5m)、3.5mm AUXケーブル(約1.2m)、高さの異なるスタンド2種など。 本体底面にはマルチカラーのRGBライティング機能も搭載。インテリアなどに合わせて発光パターンなどを変更できる。片側のスピーカー上部には電源や音量調整、入力切替、RGBライトの発光パターンを切り替えるタッチボタンも備えている。 合わせて借りたPebble Xは、従来モデルからサイズアップされた2.75インチのドライバーとパッシブラジエーターを搭載したモデル。球体状の本体デザインやドライバーが45度上向きになっている設計などはPebble Novaと共通だ。 入力はBluetooth、USB、アナログ入力の3種類に対応。Pebble Novaとは違い、USBバスパワーでも駆動できる。なおUSBバスパワー時のピーク出力は30W、別途USB PD電源アダプター(30W)を用意すればピーク出力60Wを発揮できる。 ■ 高級感のある仕上げ。操作性にはやや不満 Pebble Novaの実機で、まず目を惹かれるのが本体の仕上げの良さ。ドライバー前面に置かれた特徴的なデザインのウェーブガイドや、そこから覗くツイーターのカラーリング、ドライバー後方のシルバー仕上げなどから高級感が漂ってくる。 筐体はプラスチック製だが肌触りの良い梨地のような滑らかな質感で、電源ON/OFF時などに筐体に触れてもチープさを感じることはなかった。 また特徴的なのが、付属のスタンド。Pebble Nova自体の重さは片側約1.89kg(スピーカーケーブル)なのだが、付属スタンドは金属製でずっしりと重く、組み合わせるとしっかりとした重量感のあるスピーカーに変貌する。製品にはスタンドと組み合わせて使う支柱パーツが付属しており、設置状況に合わせてPebble Novaの高さを変えることもできる。 ただし、スタンドをスピーカー本体に取り付ける際にはネジ止めが必要で、別途プラスドライバーを用意する必要があるので、この点は注意して欲しい。 Pebble Novaは出荷状態で、タッチボタンを備えている側のスピーカーが右チャンネルに設定されているが、本体操作やアプリ経由で左右を入れ替えられる。設置環境に合わせて左右を入れ替えられるのは嬉しいところ。今回はデフォルトのタッチボタン搭載側=右スピーカーとして使用している。 そんな右スピーカーの背面には、左スピーカーをつなぐためのUSBポート、電源用のUSB-Cポート、PC接続用のUSB-Cポート、3.5mmステレオミニのAUX入力を搭載。側面のゴムカバーを外すと、ヘッドフォン/マイク入力端子にもアクセスできる。 右スピーカー上部のタッチボタンで電源や入力切替が可能。電源をOFFにしても前回選択した入力ソースを記憶してくれるほか、USBケーブル/AUXケーブルを接続すると、自動でスピーカーの入力が切り替わる機能も備えている。 電源の状態や選択している入力ソースの状況は本体上部、電源ボタン横にあるLEDライトの色で識別するのだが、スピーカーをデスクトップ上に置いて、椅子に座って操作しようとするとLEDライトやボタンを視認できず操作しにくい。音量調整はスピーカー側ではなく、PCやタブレットなど接続機器側で行なうほうが便利だった。 一方、Pebble Xは本体前面に操作系が集約されているので、操作性の良さはPebble Xのほうに軍配が上がる。 またPebble Novaは電源ON時に「ダーーンッ」、電源OFF時に「ピュウウン」という独特の効果音が流れるのだが、本体の作りとは対照的に少し安っぽい印象を感じてしまった。説明書やアプリではこの効果音をOFFにする項目が見当たらなかったのだが、ボイスプロンプトをOFFにすると電源ON/OFF時の効果音もOFFにできることがわかった。 ボイスプロンプトはアプリ、または本体の音量ボタンを5秒同時押しすることでON/OFFを切り替えられる。 ■ PCスピーカーとはクラスの違うサウンドで思わず笑みが 音を聴いてみる。まずはMacBook AirとUSB接続してApple Musicを聴いてみた。まずは比較用のPebble Xで「Mrs.GREEN APPLE/ライラック」や「tuki./晩餐歌」、ちょうどクリスマス時期も挟んでいたので「マライア・キャリー/All I Want for Christmas Is You」などを再生すると、ボーカルなど中高域がガツンと前に出てくるサウンドで歌声が聴き取りやすいが、解像感は全体的に抑えめ。高域もシャリ感があって、“頑張って鳴らしている”感が強い。パッシブラジエーターを搭載していることもあり、低域も筐体のコンパクトさを踏まえると充分出ているが、それでも量感には物足りなさを感じる。 続いて“本命”のPebble Novaにスイッチして、同じ楽曲を聴いてみると、音が流れた瞬間にいわゆるPCスピーカーとはまったく格が違う、別次元のサウンドが流れ出して思わず笑みがこぼれてしまう。 ボーカルはしっかりとした解像感、明瞭感があり、「マライア・キャリー/All I Want for Christmas Is You」のイントロ部分ではボーカルの細かなリバーブもきっちり表現され、シャンシャンシャンという鈴の音やピアノのサウンドもくっきりと聴き取れる。歌い出しでコーラスが複数重なる部分も、各パートがしっかりと描写されて音に厚みがあり、音楽の世界に引き込まれる。 「Mrs.GREEN APPLE/ライラック」は、冒頭のギターソロで弦の震えが見えるかのような描写力。ボーカル・大森元貴の歌声もクリアで、特徴的なファルセットもピーキーさがなくスッと伸びていく。 ライラックの場合、Pebble Xで聴くと大森のボーカルが前面に出てくる一方で、バックのギターなどは埋もれてしまって聴き取りにくかったのだが、Pebble Novaでは分解能が高く、どちらもしっかりと描写される。 低域もサイズ以上の量感・迫力で「Creepy Nuts/Bling-Bang-Bang-Born」は楽曲本来の魅力を存分に味わえる。普段仕事用に使っている無印良品の折りたたみテーブルにPebble Novaを置いていたのだが、スピーカーの低域に負けてテーブルがビリビリと共鳴してしまうほどだった。一般的なPCスピーカーでは机が鳴るほどの低域は味わえなかったので、ここからもPebble Novaの“クラス違い”ぶりを感じた。 Pebble NovaでNetflixも視聴してみた。今なお高い人気を誇るF1ドライバー、アイルトン・セナを描いたドラマ「セナ」の第1話では、まずセリフが明瞭で聴き取りやすい。机が震えるほどの低音再生能力も相まって、BGMにも重厚感がある。 また第1話後半はフォーミュラ・フォードというレーシングカーでバトルが繰り広げられる。この場面では、マシンのタイヤが地面と擦れる音や凹凸のある縁石を乗り越える際のブルブルッという振動音、コクピット内で金属同士がガチャガチャとぶつかるような細かい音まで描写されるため、自分がレーシングカーのコクピットに収まったかのような臨場感を味わえた。 そのほかPCディスプレイのヘッドフォン出力とアナログ接続してゲームもプレイ。2016年発売のTPSゲーム「Gears of War 4」などを遊んでみると、銃声やメイン武器のチェーンソー音、ブームショットというグレネードランチャーのような武器の爆発音も迫力たっぷり。それでいてキャラクターのセリフは鮮明で聴き取りやすく、またスワームという敵のくぐもった息づかい、「グヘヘ」という笑い声も聴きやすく、相手の位置を音からしっかり把握することができた。 ■ USB DACアンプとセットで高音質を追求することも このPebble Novaは、クリエイティブの高音質USB DACアンプの最上位モデル「Sound Blaster X5」と組み合わせると、より高音質なサウンドを楽しめるのも特徴。せっかくなのでSound Blaster X5も借りて、サウンドをチェックしてみた。 Sound Blaster X5は、高音質ハイレゾ再生に対応したUSB接続のDACアンプ。シーラスロジック製のDACチップ「CS43198」と「XAMP」ヘッドフォンアンプをデュアルで搭載したフルバランス設計で高音質と高出力を両立している。直販価格は39,800円。 本体前面に3.5mmステレオミニと4.4mmバランスのヘッドフォン出力を搭載し、大型で操作しやすいボリュームノブも備えている。背面にはRCA入出力と光デジタル入出力を備え、ヘッドフォンだけでなく、アクティブスピーカーなどと組み合わせることもできる。PC接続用のUSB Type-Cポートも搭載。 今回は、MacBook AirとSound Blaster X5をUSB-Cケーブルで接続。背面のRCA出力にPebble Novaを接続した。Pebble Novaの付属ケーブルではRCA出力に接続できないが、Sound Blaster X5に3.5mm to RCAオーディオケーブルが付属しているので、こちらを使えば問題ない。 先ほどと同じくマライア・キャリーやMrs.GREEN APPLEなどの楽曲をSound Blaster X5+Pebble Novaで聴いてみると、Pebble Nova単体で聴いていたときよりも音の分離がよくなり、明瞭度がアップ。全体的にベールが1枚剥がれたようなクリアなサウンドを楽しむことができた。 またSound Blaster X5を組み合わせたことで、使いづらさを感じていたPebble Novaの上部タッチボタンではなく、Sound Blaster X5のボリュームノブで音量調整できるのも嬉しいポイント。ボリュームノブは適度な重さで、細かな音量調整や一気に音量を上げ下げしたい場合も操作しやすかった。 ■ Pebble Novaはしっかり音楽が楽しめる1台。価格は気になるが満足感高め 人気のPCスピーカーシリーズの“プレミアムモデル”として登場したPebble Nova。「プレミアムといってもPCスピーカーでしょ」と思いきや、解像感の高いサウンドでしっかりと音楽に浸ることができるスピーカーに仕上がっていた。 年末年始も挟んで、Pebble Novaを約1カ月使ってみて、スマホやタブレットの内蔵スピーカーに頼る機会が激減した。これまでは就寝前のリラックスタイムはiPadの内蔵スピーカーでYouTubeをダラダラと観ることが多かったが、Pebble Novaが来てからは同じYouTubeでもiPadとUSB-C接続して再生する機会が増えた。 音楽に関しても、Apple Musicのプレイリストを流しながら写真の整理をしたり、ゲームのレベル上げに没頭したりと、自室で音楽を流している時間が増えたように感じている。 41,800円という価格の高さがネックだが、サウンドや本体の仕上げなども踏まえると満足感は高い。丸いデザインも独特でデスクトップにも置きやすいサイズ感なので、スマホの内蔵スピーカーやお手軽なBluetoothスピーカーからステップして、もっと良い音を楽しみたいという人にはピッタリだ。 さらにSound Blaster X5も揃えると合計81,600円とかなりの出費になってしまうが、上述のようにSound Blaster X5はヘッドフォンアンプとしても使用でき、バランス接続にも対応しているのでコストパフォーマンスは高い。 もちろんPebble Nova単体でも充分クオリティの高いサウンドを楽しめるので、まずはPebble Novaを使い込んで、その上で「もっと音質を高めたい」と感じたり、手持ちのバランス接続対応ヘッドフォンをPCでも使いたいと思った際に購入を検討する、という感覚で良いだろう。 【お詫びと訂正】記事初掲時、電源ON/OFF時の効果音をOFFにできないと記載していましたが、ボイスプロンプトに連動することが分かったため本文を修正・追記しました。またSound Blaster X5との接続には別途3.5mm to RCAケーブルが必要と記載しておりましたが、Sound Blaster X5に付属するケーブルを使用可能でした。お詫びして訂正いたします。(1月9日10時57分)
AV Watch,酒井隆文