<ラグビー>トップリーグ開幕 W杯に向け本格始動
世界各国の知恵と才気が集う日本最高峰のラグビートップリーグは、12季目が8月22日に開幕する。日本代表勢の気概と昨季の上位チームの構造改革がおもな見所だ。「トップリーグでもテストマッチ(国同士の真剣勝負)のプレーを」。日本代表選手に、こう伝えるエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は、いつも現地視察と映像確認で複数選手の動きをチェック。課題を各人にメールで送信し、その改善の度合いを翌週以降のゲームで見定めて、またメールを送っている。 来秋のワールドカップイングランド大会で、ジャパンは史上初の準々決勝進出を狙っている。ジョーンズHCの監視対象の選手は、より緊張感を持ってトップリーグを迎えるだろう。なかでもフルバックなどを務める松島幸太郎は、今夏ようやくトップリーグデビューが叶う21歳だ。ジンバブエ人を父に持ち、桐蔭学園高卒業後は南アフリカのシャークスアカデミーで武者修行。昨秋、ジョーンズHCらの説得を受け、サントリーへの電撃加入と代表デビューを果たしていた。バネと柔軟性を長所に駆ける。8月8日の東芝とのプレシーズンマッチでも、自陣22メートル線付近右から一気に敵陣ゴール前まで直進。トライをアシストし、来場者を驚かせた。 得意のランと同時に、キックでの陣地獲得も心がけていた。味方の接点での「プレッシャーを軽減させたい」から蹴ったというが、その決断はジョーンズHCのリクエストとも関係がありそうだ。かねて代表指揮官は、若き褐色のランナーにプレー選択の正しい判断を求めている。 他にも、パナソニックのウイング山田章仁がここ2年間「ボールタッチ数を増やす」「確実なプレーを選択する」と言い続けているのは、「エディーさん」のリクエストを受けてのこと。トップリーグのプレーとテストマッチのそれをリンクさせる代表選手は少なくない。 一方、南半球最高峰のスーパーラグビーのレベルズに在籍しているフッカー堀江翔太は、国内所属先のパナソニックではあえて国際舞台とは違ったスタンスでプレーする。テストマッチやスーパーラグビーでは、果敢にブレイクダウン(ボール争奪局面)に突っ込む「テストマッチ仕様」で臨むのに対し、トップリーグでは、攻撃ラインに残って優れたラン、パス、キックのスキルを繰り出す「トップリーグ仕様」となる。比較的テンポの速い国内シーンで、クラブの勝利を最優先させるために。「うちのチームに合った、うちのチームに貢献できるようなプレーをしたいっす。テストラグビーとクラブラグビーは種類が違うんでね」。 今春、スーパーラグビーのブランビーズで武者修行を積んだスタンドオフ立川理道も然りだ。所属のクボタと日本代表の攻撃スタイルがやや異なるなか、こんな意識を持ちたいという。「ワールドカップ…考えないわけにはいかないですけど、それを気にし過ぎるとクボタのラグビーがぶれてゆくので。エディーさんも、自分のチームに帰ってまで代表でのプレーをしろとは言わない。チームに100パーセント集中して、代表選手であるような基本プレーなどを見せてゆく」。 国内の試合をテストマッチへのリハーサルとする者、持ち場ごとに気持ちを切り替えて各々のニーズに応えてゆく者。どんな立場の選手のプレーも、ワールドカップでのパフォーマンスに何がしかの形で繋がっている。リーグ全体を見渡せば、昨季の上位4強に残ったチームの構造改革が興味深い。それぞれの変容がクラブにどう影響し、どんな結果に結びつくか。そのプロセスは、ファンを年間通して楽しませるだろう。